六十四 捜し人
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に入れないように、さりげなく関わらないように努めてきたのだ。
(――でも……本当は、)
「毎度〜」という言葉を背中で聞きながら、お面を被る。早々に被った狐面の裏で、ナルは呟いた。
「オレってば、狐、べつに嫌いじゃないってばよ」
腹の内で動揺する気配が微かにした。
「あだ…っ!―――いって〜…」
直後、石に躓いて転ぶ。顔面から地へ突っ伏した衝撃は、自身の中にいるモノの心境の変化をナルに気づかせなかった。
面をつけたまま、痛みに耐える。地に伏した状態で、少し赤くなった鼻の頭を擦っていると…。
「――大丈夫か?」
すっと手を差し伸べられる。
顔を上げると、ナルと同い年くらいの子どもが屈んでいた。手を取り、引っ張り上げてくれる。
「あ、ありがとうだってば…」
「面を被ったまま、歩くと危ねえぞ?」
含み笑いながら、おもむろに手をナルの鼻の頭に翳す。青白い光が燈ったかと思えば、じんじんとしていた鼻の痛みが和らいでいった。
医療忍術だろうか。すっかり無くなった痛みにナルが大袈裟なほど驚く。ナルの容姿を見て、一瞬目を見開いたその子どもは、ややあって照れ臭そうに頭を掻いた。
赤い髪によく映える紫紺のバンダナの裾がゆらゆら揺れている。左目の下にある泣き黒子が印象的だ。
「お礼に林檎飴でも奢るってばよ!オレってば、波風ナル!!」
ナルの誘いに、赤髪の子は一瞬呆けたように目を丸くした。やがて満面の笑顔で頷く。
「よろしくな!オレは……」
人々が入り乱れる雑踏の中、二人の子供は快活に笑い合った。燦々と降り注ぐ陽光がお祭をより活気溢れるものへ導いてゆく。
今からが本番だというように。
「オレの名前はアマル…アマルっていうんだ!!」
祭囃子はまだ止まない。
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