六十四 捜し人
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だからいつも金を借りたまま、逃げて、金貸しに追われる…とまぁ、こんな具合だ」
自来也の懐旧談に、ナルは口をあんぐりと開けていた。開いた口が塞がらないまま、それでもなんとか我に返って「そ、それじゃあ、どうやって捜すんだってばよ?」と辛うじて問い質す。
「だからこその情報収集だのぉ…――まずは、この街でな」
自来也の視線を追った青い瞳が大きくなる。視界に入ってきた光景に、ナルの口から自然と感嘆の声が溢れた。
街道を抜けたその先には、賑やかな街が広がっていた。
街道を塞ぐように在る街。
街頭の小高い丘から一望出来る其処は、ちょうどお祭りで賑わっていた。斜面に設けられた階段を下りるにつれ、聞こえてくる祭囃子。
お祭り独特の華やかな空気が流れる街並みを見渡し、改めてナルは感嘆の吐息をついた。
「すっげ〜!オレってば、こういう所、初めてだってばよ」
「当分の間、祭りは続くからのぉ。その間はこの街に留まる。修行も此処でやるぞ」
活気のある街に足を踏み入れる。着いて早々、遊んでこいと自来也から許可を貰ったナルは早速お祭りに繰り出した。
もっとも、任務で必死に貯めた財産の大半は強制的に自来也が預かる事になったのだが、街の雰囲気に流されていたナルは既にお祭り気分だった。自来也と別れるとすぐさま、聊か心許無いお金を握り締めて、店と店の間を縫うように駆ける。
雑然たる街中にいても、冷徹な視線や、聞こえるか聞こえない程度の悪口雑言や、投石などの暴力が無い事が新鮮だった。誰の目も気にしなくてよいという開放感に満ち足りた気分になって、つい浮かれてしまう。
里と違って、此処には自分を知る者はいないのだと思うと、足取りも自然と軽くなった。
(里で出来なかった事を思いっきりやってやるってばよ!)
路の左右に出店が立ち並び、大勢の人で賑わっている通り。人波に揉まれていたナルは、ふと足を止めた。
お祭りの代名詞の一つとも言えるお面。それらを売る店頭で立ち止まる。様々な動物の顔を模して作られた品物の内、一つのお面に目が留まった。
自身の顔にある髭と同じ三本髭。ぴょこんと飛び出た耳に、つんっと澄ましたように高い鼻。窪みすらない糸目だが、吊り上がった目尻。
それらに引かれた紅が白面上一際目立つ――狐のお面だった。
何処にでもありそうな、何の変哲もない狐の面は木ノ葉の里では滅多にお目にかかれない。
九尾の妖弧に対する遺恨が未だに根付いているからだ。人柱力であるナルに対して嫌悪の視線が絶えない事からも里人の怨情の深さが窺える。
故に、木ノ葉の人々の大半は狐に関したモノに敏感である。ましてナルが狐関連の物に触れると異常な反応を示す。
だから今まで彼女は自ら狐を避けてきた。なるべく視界
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