歌い手、抜け出す
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♪
「そうですか。なら・・・僕たちの勝ち、ですね?」
僕はペストに向かって剣を飛ばし、そう言ってみる。
なんだか黒ウサギさんたちの視線が怖い・・・
「奏さん!」
「はい!何でしょう!?」
「どうしてここにいるのですか!!」
「いや、その・・・特に体調に異常は感じませんし・・・問題ないかなぁ、と・・・」
まあ、これは言い訳でもなんでもなく、事実だ。
腕とかに黒い斑点は現れているから間違いなく黒死病には感染しているんだけど、僕は特に違和感を感じていない。
だから結構余裕があって、わざわざ本番衣装に着替えてきた。
「はぁ・・・貴方は言われたままに大人しくしている人間だと思ったのだけど?」
「それはご期待に添えないようで。まあ、何もしないでいられるほど大人しくもないよ。体調が悪いならともかく、ね」
「いや、奏さんの体調が悪くないはずが・・・」
「そうね・・・貴女たちは知らないみたいだし、サービスで教えてあげるわ。“音楽シリーズ”のもつ、呪いについて」
また、物騒な言葉が出てきたなあ・・・呪いって・・・
「それは、いついかなるときでも、音楽が奏でられる、と言うものよ」
「?それは別に呪いでもなんでもない気がするのですが・・・」
「いや・・・立派な呪いだよ。だって・・・どれだけ体が参ってても、それを一切感じることが出来ないんだから・・・」
「そう、正解。“音楽シリーズ”のギフト保持者は、死の直前になっても、自分の体がそんな状態だと感じることが出来ない」
「死ぬその瞬間まで、音楽をかなで続ける・・・確かに、呪いだなぁ・・・」
まあ、そこまできついとも感じないし、問題ないけど。
それに、そのおかげでここに来れてるんだから、むしろ感謝しておこう。
「じゃあ、僕も一つ、調べたら出てきた“音楽シリーズ”の知識の披露を。『音楽は万人、万物に平等である。その音色の前に、格上格下の隔たりは存在せず』・・・このギフトは、相手の霊格に関わらず、効果を出す」
そして、僕は曲目を発表する。
「“奇跡の歌い手”による、たった一曲のコンサート、どうぞごゆっくりお楽しみあれ。・・・『レクイエム ニ短調k.626第三曲 6,ラクリモーサ』」
そして、いつも通り僕は、歌う。
八千万の霊軍に対して送る、魂を送る歌、鎮魂歌を。
「ぐ・・・皆、ダメ・・・耐えて・・・」
曲が始まると、ペストは見るからに苦しみだした。
まあ、自分の霊格を構成している八千万の霊軍が苦しめば、その苦しみが自分に帰ってきて当然だろう。
「この・・・その口を、閉じなさい!」
そして、ペストは僕の歌を直接止めようと黒い風を放ってくるけど・・・今の僕に、それは効果が薄
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