Introduction
第十二話 来襲
[1/8]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「さて、いよいよ学年別トーナメントの時期が近づいている訳だが……」
一日を締めくくるSHRで、千冬さんがもうじき開催されるトーナメントの概要を説明している。でもいつもの凛とした立ち振る舞いとは程遠く、その表情はやや引き攣っている上になにやら心労が垣間見える。
学年別トーナメントは、前回僕が参加したクラス対抗戦とは違い全員参加だ。そのため、一週間という長期に渡り開催される。一年は入学から僅かな期間の訓練における先天的能力評価、二年は継続的訓練による成長能力評価、そして三年はより具体的な実戦能力を評価する。特に三年の場合、卒業後を見越して各国や企業の重鎮やスカウトが顔を出すこともありかなり大がかりなものになるとか。
そういった背景もある、IS学園でも最大級の行事だから千冬さんがそんな様子なのも不思議ではないのだけど、僕にはそれ以外の理由がわかっている。というより、現在進行形で僕も頭を悩ましているものだからだ。
「あー、なんと今回のトーナメント期間中にIS開発者である篠ノ之博士が視察にくることが決まった」
『ええぇぇーー!』
そう、先日の予告通り束さんが来るらしい。しかもどういう訳かこっそりではなく公式ルートを使って。当然、千冬さんの口が出たその意外すぎる名前にクラス中が騒然としている。公式発表されるみたいだから、すぐにでもクラスどころか世界中が騒然とするだろうけど。
というかですよ、あなた国際的に指名手配されてますよね!? いや、まぁ犯罪者としてではなく名目上は保護目的のような感じにはなってるけど。
学園に何らかの見返りを渡して、ということだろうか。IS学園は一応はどの国家に帰属していないことになっているから引き渡し要求なども拒否できることはできる。とはいえそれはあくまで建前で、拒否すればそれなりに国際的によろしくない立場になるだろうし、当日の警備の手間などを考えたら……。う〜ん、束さんいったい何をしたんだろう……いや、彼女なら弱みを握っていたりして脅しててもおかしくない……か? うん、余計なことは考えないようにしよう。知らない方がいいことってあるよね。
「しかも、日程としては一年の試合期間中の可能性が高い。あまりお前たちを脅かすつもりはないが、必然的に例年以上に注目されることになる。つまりなんだ……頑張れ」
ち、千冬さんらしくない……というより言葉の端々に諦めや達観のようなものが見えるんですが。いや確かに気持ちはわかるけどね。もし彼女が束さんと親交があることを知られているとしたら、束さん来訪関連の雑務を押し付けられているだろうことは簡単に想像できる。いや、下手をすれば束さんが半分嫌がらせで千冬さんを指名している可能性もある。
……時折、殺意すら感じる鋭い視線をこちらに向けてくるのは気のせいではないはず。
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ