Introduction
第十二話 来襲
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本気なのかもうわからなくなってきた。彼女からしてみたら今回の対面で束さんに認識されるに至ったのだから、実際に使えるかどうかは別として非常に大きな手札を得たことになるんだろう。どちらにしろ僕にとっては泣きたくなる状況なのは変わらないのだけれど。
「あれ、そういえば僕が連絡したときにいた女の人は?」
以前、連絡したときに出ていた女性の声を思い出す。たしかくーちゃん? 通信を切る間際にその人と一緒に来るようなことを言っていたけど束さんは一人で来ている。
「ん、くーちゃんのこと? 今はお留守番なんだ。明日には来るよ?」
「その人は僕のことは知ってるの?」
「うん、いろいろお手伝いしてもらってるからね。しーちゃんが使ってる端末なんかもくーちゃんがお手伝いしてくれたんだよ!」
どうやら知らないところでお世話になっていたらしい。なら明日来たときにお礼も兼ねて挨拶をしておこう。とはいっても、どんな人かも名前もわからないし束さんに聞いても満足な答えが返ってくるとは思えないから一緒にいるタイミングじゃないと難しいけど。
「そっか、なら明日会ったときにお礼がしたいから紹介してね」
「うん、わかった! それじゃ今日は一度帰るね〜、ばはは〜い」
そう言うや否や急に煙のようなものが束さんの服から湧き出して一瞬であたりが見えなくなってしまう。気付いた時には束さんの気配が部屋から消えている。相変わらずデタラメな人だ。
「ごほっごほっ、言いたいこと言って帰っちゃったね、ごめん」
「こほっ、ふふ。面白い人ね、友人として付き合えるかはちょっと考えちゃうけど」
「あはは、そうだね。近すぎると大変さが勝るからあまりオススメはできないよ」
束さんは最初から最後まで僕らをかき乱したけれど、何故か後に残ったのは温かいものだった。彼女の在り方は決して万人受けするものではないけど、やはり僕は彼女のことが人間として好きなんだと思う。
でも、彼女が出した煙が原因で火災報知機が鳴り、寮が大惨事になったことを許せるかどうかは別の話だと思う。
翌日、学園は一年間でも最大級のイベントということで大賑わいとなった。例年では、各国・各企業の人間がやってくるのは最終日付近、三年の試合からなのだけど、今年ばかりは束さんの来訪が知れ渡り、あわよくば接触しようという人間で初日から大盛況だ。そのせいで会場の雰囲気は試合内容というよりも、束さんを探すことに重点が置かれてしまい、試合をする人間からしてみたらなんともやりにくい。
「私たちは午後からだから、しばらくゆっくり観戦できるわね。篠ノ之博士に会うなら今日がチャンスじゃない?」
喧噪から外れた場所で、僕と楯無さんは今日のことを話していた。開会式は終わり、もうじき一年の試合が始まるが、
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