Introduction
第十二話 来襲
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っほー、しーちゃん! 約束通り会いに来」
何やら幻覚が見え、幻聴まで聞こえたので僕はそっと扉を閉めた。
「……紫苑君? 何か見てはいけないものが見えたような、聞こえてはいけないものが聞こえたような」
「何も言わないでください」
現実逃避をする間もなく、扉が激しく叩かれる。同時に、扉の向こうから声が漏れ聞こえてくる。
「ひどいよしーちゃん! せっかく会いに来たのに追い出すなんて! ま、まさか同室の女とイチャイチャするから私を捨てるつもりなんだ、そうなんだ! 私とのことは遊びだったんだね、わーん!」
「誤解を招くことを叫び散らさないでください! とにかく入って!」
束さんが部屋の中まで聞こえる声でとんでもないことを言い出したためすぐに部屋に扉を開けて部屋に引っ張り込む。……悪夢だ。これ、周りの人に聞かれてたら変な誤解されたんじゃないだろうか。今は部屋の外がどうなってるのかなんて知りたくない。
「むぅ、せっかく会いに来たのに冷たいんじゃないかな?」
部屋に入った後もまるで悪びれる様子もなく、束さんはただ頬を膨らませていじけている。
「場所とタイミングを考えてよ! 一応は国際手配中なんだよ!? それに何で今まで連絡取れなかったのさ、一方的に用件だけ伝えて切っちゃうし!」
「えへへ〜、驚かそうと思って」
「十分に驚いたし、心臓に悪いよ! それに千冬さんにも面倒押し付けて。死にそうになってるよ!」
「し、紫苑君。落ち着いて頂戴……」
思わず束さんの肩を掴んでがくがく揺らしていた僕を後ろから楯無さんが宥めてくる。気が付けば束さんが頭をフラフラさせながら意識が飛んでいた。
しばらくして、ようやく落ち着いた僕と復活した束さんは楯無さんが入れてくれたコーヒーを飲みながら話せるようになった。
「えっと、とりあえずこちらが同室になった更識楯無さん。前にも話した通り僕の事情を知った上で協力してくれているんだ。それで、こちらが篠ノ之束さん。まぁ、見ての通り個性のある人だね」
楯無さんと束さんは初対面になるので、最初に僕からそれぞれを紹介する。楯無さんは先ほどの顛末を見ていたので若干苦笑い……というか引いてる感じがする。これくらいで引いていたらこの人とは付き合えないと思うよ。そして束さんは何故かエラそうにドヤ顔している。僕の皮肉を込めた紹介が褒められているとでも思ったのだろうか。
「初めまして、篠ノ之博士。更識楯無といいます。お会いできて光栄です」
「ふ〜ん、君がしーちゃんを誑かしてるんだ〜。でも渡さないよ! もし手なんか出したら……」
何やら不穏な空気が。思わず冷や汗が出てしまう。でも何やら黒いオーラが出始めている束さんに対して楯無さんも一歩も引かずに相対している。
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