Introduction
第十一話 紫苑と紫音
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するかもしれないよ?』
『? 束さんがいるから僕は気にならないよ。ISを使って空を飛んだり宇宙に行けないのは残念だけどね』
そう言ったあと、また束さんが泣きついてきて大変だったな、と当時のことを思い出して思わず苦笑してしまう。女尊男卑になるきっかけともいえる白騎士事件には僕も無意識とはいえ関わってしまっていたのは皮肉なものだと思う。でもそれで束さんを責める気は全くなかった。
この時には、もう僕は歪み始めていた自覚はある。辛くなかったと言えばうそになるけど次第に周りの興味のない人達のことは気にならなくなった。今にして思えばこれも束さんの影響を受けていたのかもしれない。
ふと、昔のことを思い出しながら目の前にいた紫音に意識を戻すと、さっきまでとは違いにっこりと笑っている。おかしい、こんな紫音は見たことないはず。ないはずなんだけど……僕はこの顔を知っている、しかもつい最近も見た気がする。
『……ん。……んくん』
この声は……楯無さん?
『紫苑君!』
あぁ、そうか。とその時僕は気づいた。今目の前にいるのは紫音じゃない、僕だ。
紫音は確かに、あんな冷めた目をしていたけど僕もそうだったんじゃないか。でも、今は違う。束さんに会い、この学園でも楯無さんに……フォルテさんに……いろんな人に出会うことができて、今の僕はこんな風に笑えているんだ。
なら、紫音はどうなんだろう。倒れる前は笑えていたのだろうか。友達と遊んでいるときも、仮面のような笑顔を見せても彼女の目は変わらなかった気がする。そして、僕は彼女のことをどう思っていたんだろう……。
そう、考えようとした瞬間、目の前の紫音はガラス細工のように砕け散った。同時に僕の意識が急激に覚醒していくのが分かる。
「紫苑君、大丈夫?」
目を開けると、僕のことを心配そうに見下ろす楯無さんの顔が見えた。
「たて……なしさん?」
「あなた酷くうなされてたわよ? それに汗びっしょりじゃない……。昨日からなんだか体調悪そうだったし、ちょうど今日は休みなんだから、汗拭いたら着替えてもう一度寝なさい」
確かに汗で服が貼り付いて気持ちが悪い。どうやら相当うなされていたようだ。昨日の疲れも溜まっていたんだろうか。……それにしても久々に姉のことを思い出すような夢だった。まだ少し体も怠いし、楯無さんの言うように汗拭いたあとに着替えてもう少し寝てよう。
「うん……ありがとう」
「ど、どういたしまして?」
楯無さんのほうを向いて、自然と夢で見た紫音の笑顔を思い浮かべながらお礼を伝えたら何故か疑問形で返された上に顔を逸らされた。よくわからないけどちょっと傷つく。でも僕は心配してくれたことに加えて、名前で、紫苑と呼んでくれたことが嬉し
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