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誰が為に球は飛ぶ
青い春
拾 やもめの憂鬱
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に等しいわ。」


労った美里に対し、律子はコーヒーを啜りながら素っ気なく返した。


「文科省の役人にしろ、報道陣にしろ、だいたいが文系の数学音痴。データを改竄するまでもなく、見せ方を工夫するだけで、いくらでも騙せるわ。」
「ふっ、キビシイねぇ」


律子の辛辣な物言いに、加持は苦笑いする。
実は加持も、先ほどの律子の発表に感心していたクチだったのだ。


「…ねぇ、律子の後に登壇したウチの理事長、碇って姓だったわよね?」
「ええ、碇玄道理事長。それが?」
「いや、あたしのクラスの子に碇って子が居るもんだから、何か関係あるのかと…」


律子は渋い顔で美里を見た。少し批難の色が混じっている。


「知らなかったの?碇理事長はあなたのクラスの碇君の保護者よ?」
「えっ?」


美里は目を丸くする。加持は美里にも苦笑いした。


「直接の親子じゃないらしいんだけどな。」
「えっ何何?碇君実は孤児な訳?そんなの初耳よ?」


これには律子と加持、2人がため息をつく。


「生徒把握がなってないわね」
「葛城はホント大雑把だからなぁ」


ーーーーーーーーーーーーー



「…定例報告会だった。それなりに、疲れた。足りないモノは無いか?あれば、連絡をよこすように。元気だと聞いた。何よりだ。」

そう留守番電話に吹き込み、男は電話を切った。
短髪だがモミアゲがアゴヒゲと繋がっており、何ともむさ苦しい。黒基調の服装に、サングラス。堅気には見えないような格好をしているが、これでも教育に携わる人間である。

碇玄道。国立ネルフ学園の理事長及び人工進化研究所「NERV」の所長。
そして、碇真司の保護者でもある。

真司が不慮の事故により両親を亡くしたのは、中学卒業後すぐ。真司の父親は玄道の弟だった。玄道以外に、世話をするべき人間も居なかった。

正直言って玄道は子どもなど苦手である。それが思春期真っ盛りでなおかつ傷心しているであろう少年となれば、どうすればいいのか、と途方に暮れた。だがありがたい事に、真司はとてもおとなしい、物分りのいい子どもだった。とりあえず、親を失った悲しみをぶつけられる事がなくて良かった、と思った記憶がある。

元々進学予定だった私学の話を断って、定員が幸い20人ほど割れていたネルフ学園に入学させた。その方がいざという時面倒が見やすいだろう。
この事は玄道が勝手に話を進めた感もあったが、真司は嫌な顔せず従った。

第三新東京市での生活に関しては、玄道は一体どうしたものか、と頭を抱えた。自分はNERVの社宅に、年を取った今も住んでいる。一人用の小さな部屋だ。
別に、金が無い訳ではない。それなりのマンションを借りる事は簡単だ。ただ、真司と
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