フェアリィ・ダンス編〜妖精郷の剣聖〜
第六十八話 余裕がない心
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「・・・おれが行ってなにができるんだか・・・」
世界的に有名なホワイトハッカーである父親の夜鷹やアスクレピオスと呼ばれる世界的名医である叔父の鷹明なら何かできたかもしれない。だが、桜火はそれほどナーヴギアに詳しくないし、医学にも精通していない。そんな桜火が月雫のもとに行ったとしてもできることといえば無事を祈りつつ見守ることしかできないだろう。そこまで考えて桜火は溜息をはいた。
「(・・・おれはいつからこんなセンチメンタルなことを考えるようになった・・・)」
本来なら桜火は人の命に対して結構ドライだ。だが、こと月雫のことになると非情になりきれないところがある。
「(愛は人を変える、とはよく言ったものだな・・・あぁ、がらじゃねぇ・・・)」
今日のおれはどこかおかしい、そんなことを思いながら桜火は病院に背を向け、来た道を帰っていく。まばらな人混みを歩いていくと、ある一組の兄妹の姿が目に映った。
「(偶然、でもないか・・・)」
アスナがこの病院に入院していることを桜火は知っているため彼――キリト――がここを訪れても何ら不思議ではない。だが、だからといって声をかけることはしない。めんどくさいというのもあるが、それ以上に今は誰とも話す気になれなかったからだ。
進路も変えずにそのまま歩いていく桜火。キリトは妹とおぼしき人物との会話で桜火に気づく気配はない。そしてお互いがすれ違った瞬間、桜火がキリトに聞こえるくらいの声量でボソッと呟いた。
「こんにちは、キリト君」
その言葉を聞いたキリトが目を見張りながら勢いよく振り返るが、そこに桜火の姿はなかった。
「どうしたの、お兄ちゃん?」
突然の兄の行動に妹――直葉――は少しばかり驚きながらキリトに訪ねる。
「・・・いや、なんでもないよ。行こう、スグ」
言葉を濁しながらそういうと病院に向かって歩を進める。慌ててついていく直葉はもう一度後ろを振り向くが、何か気になるものはなかった。
「(あー、らしくねぇ。ほんと、らしくねぇ・・・)」
二人が病院に歩いていく中、全く真逆の方へ歩いていく桜火はいつもの調子が出ない自分に溜息をついていた。
◆
「で、今どのあたりにいるんだ?」
現在の時刻はちょうどお昼。病院を後にした桜火は適当に東京をぶらぶらした後、暇そうという理由で烈を呼び出し適当なカフェテリアで昼食にありついていた。
「メンテ直前にアルンに入れた」
「そうか。それはなにより」
「お前の方はどうなんだ?」
「お前と一緒」
サンドイッチを頬張りながら答える桜火。烈はストローでアイスティーをすすりながら気になることを聞いてみた。
「んで、メンテ終わったらどうするんだ?」
「世界樹の攻略・・・な
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