第六十二話 十二時の決戦その十一
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「今も相当使ってるからな」
「僕もです」
「力が尽きるな」
こう難しい顔で言う。
「やられたな」
「僕もです」
そしてそれは上城もだった。
「このままだと」
「勝負よりも前に」
「これが狙いかね」
中田はこう考えた。
「ひょっとして」
「そうですね、やっぱり」
「皆そうみたいだな」
見れば周りもだった、他の剣士達も。
力が全て尽きようとしていた、そしてだった。
遂に全員戦いを止めた、上城と中田も。
中田は剣はまだ手にしているが力が尽きたその様子でやれやれといった顔で周囲を見回してそのうえで言った。
「誰なんだい?」
「はい」
返答が来た。
「私です」
「ちょっと姿を見せてくれるかい?」
声の主、剣士と思われるその相手に言った。
「もうこっちは何も出来ないからな」
「そうなる様にしましたし」
「そうだよな」
「その通りです」
「じゃあ出てくれるかい?」
「では」
声は応えてきた、そして。
グラウンドにだった、その彼が出て来た。
見れば口髭と顎鬚が一つになった褐色の肌の男だ、背は一七八位だ。頭にはターバンを巻きインドの白い服を着ている。
その彼が合掌をしてから名乗った。
「シン=マガバーンといいます」
「インドの方でしょうか」
大石が問うた。
「そのお姿とお名前から察しますと」
「はい」
その通りだと返してきた。
「インド、カルカッタの生まれです」
「そうですか」
「そこから来ました、私もまた剣士です」
自分から他の剣士達に言う。
「力は幻、それに」
「それに?」
「それにとは」
「私は戦うつもりはありません」
このことを否定するのだった。
「戦うのではなくです」
「戦いを止められたいんですね」
「そうです」
こう上城に答える、流暢な日本語で。
「この無益な戦いを」
「そうですか」
「今の様にです、ですから」
それでだと言ってであった。
他の十二人を見回し、そしてそのうえでこうも言ったのだった。
「今力を使わせて頂きました」
「つまりあれだな」
中田はやれやれといった顔でその彼、マガバーンに返した。
「ここでの俺達の潰し合いを止めたんだな」
「その通りです」
「俺達の誰もが死なない為に」
「戦いはどうしてもあります、ですが」
「それでもなんだな」
「無益な、この戦いの様なものは」
それはというのだ。
「あってはなりません、ですから」
「それで、か」
今度は加藤が言う。
「俺達の邪魔をしたか」
「私の願いはこの無益な戦いを終わらせること」
それだというのだ。
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