第六十二話 十二時の決戦その八
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「あと一割な」
「一割、ですか」
「それはまだ出していないんだよ」
こう言うのである。
「それは言っておくさ、じゃあな」
その全身に力をさらに込めた、そして。
その力を出した、すると炎の勢いが強くなった。
それで上城を押そうとする、だが。
上城もだ、踏ん張ったのだった。
彼の場合は力を全て出している、中田の方が上だ。
しかしそれでもその一割劣る力で堪えこう言うのだった。
「後の一割は」
「気かい?」
「心でカバーします」
こう言って実際にそうしていた。
「それで」
「心か、だよな」
「はい、それも大事ですよね」
「人間それが第一だよ」
中田も言うことだった。
「君はそこでも強くなったな」
「有り難うございます」
「けれどやっぱり勝つのは俺だよ」
中田も意地がある、それで言ったのである。
「俺も心があるからな」
「気が、ですね」
「その一割の違いが大きいんだよ」
戦い、その中においてだというのだ。
「俺はその一割で勝ってみせるさ」
「僕に、ですね」
「他の剣士達にもな、行くな」
今その気を込めるというのだ、力に。
「死なない様にするからな」
「いえ、僕も」
上城も敗れるつもりはなかった、何とかしてその一割の違いをカバーしようとしていた、その二人の周りでも死闘が行われている。
大石は風の刃を高代に向けて次々と放つ、それで彼を止めるつもりだった。
しかし高代はその剣から彼の力である光を放つ、それを楯として。
大石の風を防いでいた、そのうえで言うのだった。
「お見事ですね」
「私の力はですか」
「はい、そのお心が出ています」
力を操る大石のその気質がだというのだ。
「一本気でしかも清らかです」
「貴方もです」
大石も大石でこう返す。
「貴方もまた、です」
「私の心もですか」
「そのお力に出ています、光です」
その光にだというのだ。
「貴方はこの世を照らすことができます」
「教育者の立場で」
「無論一人では限られています」
人の力は限られている、例え剣士であろうとも。
だがそれでもだ、彼はだというのだ。
「それだけの光があれば」
「必ずですね」
「果たせます」
そうだというのだ。
「剣士になられずとも」
「述べさせて頂きましたが人の世は心だけではどうにもなりません」
今度は高代の番だった、右手に持つ剣を高々と上に掲げ。
天から無数の光の矢を降らす、それはまさに流星だった。
その流星を降らせる中でこう言ったのである。
「資金、土地、人材」
「そういったものがですね」
「全て必要です」
彼の心だけではどうにもならないというのだ。
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