第四十六話 少年期【29】
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アも、お母さんのお手伝いをよくしてくれるでしょう?」
「え、うん」
「それでね。お母さんは2人とも、頼りになる立派なお兄ちゃんとお姉ちゃんになったなぁ、って思っているわ」
立派な兄と姉。母さんにそう言われると、気恥ずかしい気持ちになる。アリシアは特に母さんのお手伝いを頑張っていたし、みんなに笑顔を届けてくれた。なにより彼女は、確か立派なお姉ちゃんを目指していたはずだ。母さんに認めてもらえたのが、何よりも嬉しいだろう。
……あれ。そういえば、アリシアが立派なお姉ちゃんを目指すようになったのはどうしてだった。妹がお姉ちゃん計画を始めたのは、まだヒュードラの開発をしていたころだけど、でもそんなに昔じゃないはず。あの時、アリシアは確か―――
「2人は3年前に、お母さんと約束したプレゼントを覚えているかしら」
「3年前…」
『お兄ちゃんみたいにお母さんに頼りにされて、みんなを笑顔にしてくれるような、そんなお姉ちゃんに私はなりたい』
3年前に母さんと約束したプレゼント。妹も俺と同じように心当たりに気づいたのか、目を見開いて母さんの顔をまじまじと見つめる。俺も思い出したが、正直信じられない気持ちの方が強い。だって、どうやってあの約束を守るんだ。母さんが妊娠していたのなら、さすがに俺だってわかる。
「お母さん、もしかして…」
「あら、思い出した? それじゃあ、コーラル、リニス。あの子を連れてきてあげて」
母さんがリビングの扉の方に向けて呼びかけた。そして、ガチャリ、と俺たちの後方からドアノブが回る音が響く。その音に俺たちは、扉の方へ反射的に目を向けていた。
ゆっくりと開かれた扉の先。そこには、緑色に輝く宝石と、堂々と先導する1匹の猫。
『もし私にも妹がいたら、今の私みたいに一緒にいてくれて、嬉しいと思ってくれるような、そんなお姉ちゃんになりたいなって思ったんだ。しっかりした私になって、妹を大切にしていきたい』
そして、俺たちよりも幼い少女がそこにいた。
******
『私、お姉ちゃんになりたい!』
3年前、母さんが俺たちの6歳の誕生日プレゼントを訪ねた時に、妹が答えた言葉だ。あの時は下剋上されかかったのかと思ったが、アリシアは頼りになって誰かを守れるお姉さんになりたいと言っていた。自分にも俺と同じように守るべき存在を、立派なお姉ちゃんとして大切にしたいって。
そんな妹の願いを、俺はおそらく叶うことはないだろう、と心のどこかで思っていた。現実的に考えて、現状とても実現できるとは思えない願いだったからだ。5歳の時はまだ考えが幼かった妹も、今では自分の約束がどれだけ難しいことなのか理解している。だから、彼女から「妹」という言葉は久しく聞かなかったし、アリ
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