水賊頭、戸惑う
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「って、飛び出したはいいけど右も左もわかんねぇ!!」
俺は頭を抱えてぐるぐる回った。 ……他の奴に道でも聞いとくんだったぜ…。
とりあえずその場に腰をおろし、アイテムストレージとやらを見てみると、そこにはさっきまで無かった筈の、初期甘寧兄貴の武器・甲刀と、6Empiresからの武器・環分銅が入っていた。
ま、とりあえずなれる為に試してみるか。
「まずは甲刀からだな!」
個人的には鎖分銅が好きだが、甲刀だって嫌いではない。
「ブルオオウ!」
「お、良いタイミングだぜ」
俺は蒼イノシシの突進を避けると、豪快に甲刀を振り降ろして斬り付けた。
「ブギィイ!?」
「ちっ! ならもう一発だぁ!!」
一発で死ななかった蒼イノシシに、振り下ろした甲刀を振り上げて切り裂く。そこでイノシシが一瞬硬直し、やがてガラス片の様になって砕け散った。
「はっはぁ! 俺の勝ちだぜ!」
俺は両拳を握ってガッツポーズをした。やっぱり倒せたら嬉しいもんだ。
「……あんた……ソードスキルも無しに、たったニ撃って……!」
「ア?」
聞こえた声に振り向くと、そこには線の細い男が立っていた。何だか驚愕の表情をしてやがる。
「何で驚いてんだ? 別にこいつぁ強かねぇだろ?」
「……確かに、そいつはスライムみたいな立ち位置のMobだ。けど、ソードスキル無しのニ撃で倒すのは……少なくとも、今は無理の筈だぞ?」
「んな事言われてもよォ……」
いきなり最初でマズったらしい。思い返してみりゃ、この世界はゲームでしかも今は超序盤。だから最初のモンスターだって、単なる攻撃じゃ倒すのに時間がかかる筈だ。それを、さっきこいつが言ったソードスキルとやらをつかわずに、ニ撃で倒したとなると――――
「俺の腕っつーよりも、こいつのおかげって言った方がいいぜ? 攻撃力めっちゃ高いからな」
「そう……なのか……」
まだ訝しんだ表情だったが、とりあえずある程度誤魔化す事には成功したみたいだ。丁度いいと、俺はこいつに聞きたい事を聞くことにした。自分の事は誤魔化しておいた癖に、そっちは聞きたい事聞くのかよ、とかなりそうだが。
「なぁ、一つ聞いていいか?」
「……! なんだ?」
「実は俺、このゲーム初めてでよぉ……はっきり言うと迷っちまったんだ」
「あ、あんたニュービーなのか?」
「へぇ、初心者の事ぁニュービーっつうんだな……ああそうだ、バリバリの初心者だぜ」
「マジかよ……じゃあ、あんた右も左も何にも分からないのに出てきて、しかも強い武器を頼りにモンスターを相手してたって言うのか?」
「ま、そうなるな!」
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