第二章 非平凡な非日常
55、嫌われた転生者
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の思い出となっている事柄はともかく、要は1つ気にかかることがあった。
それは、コスモのこと。
名前だけなら自分だって呼んだし、雪合戦の時に名乗ったかもしれないから知っていることに関してはどうでもいい。
しかし問題なのは、コスモが、ジッリョネロファミリーのボスであるアリアの息子であるとバレていること。
いくら不注意なコスモであってもそこまで名乗るはずがない。
そうやって考えを張り巡らせる要に、やちるは小さく笑った。
「お忘れですか? 私、これでも裏社会で名のある人間。それくらいの情報は常識として持ち合わせています」
「ちっ、そうかよ。……チビ介は知ってんのか?」
「いいえ、知りません」
むしろリボーンの方が知ってそうなんだけどな。
その事実にまた舌打ちする。
「それで、原作を壊して何を企んでいるのですか?」
やちるがまた眼鏡を押し上げる。
要以上に常人離れした水色の瞳が彼女を見つめる。
要はよく「凍てついた目」等と言われていたが、やちるもまた、同じイメージを与えていた。
「別に企んじゃいねぇよ。オレはただ、オレが後悔しないように人生を送ってるだけだ」
「けどそれでは原作を壊す理由には」
「原作原作って、そんなもんに縛られた人生送って楽しいか?」
「……なんですって?」
「言っておくが、オレには原作の知識ってヤツはこれっぽっちもねぇ。正確には、捨てた。だからオレにとっては何が原作通りで何が原作壊しなのか、知ったこっちゃねぇよ」
鼻で笑う要に、やちるは理解できないでいた。
やちるは、要の言葉を信じられないでいた。
原作と違うストーリーになってしまっては、この先何が起こるのか分からなくなってしまう。
そうすれば、守れるかもしれない人が守れなくなってしまうかもしれない。
だから原作に忠実にいきたいのだ。
しかしながら、要は真逆だった。
そもそも人生なんて何が起こるかわからないものだ。
この世界に転生するきっかけとなった事故に関しても同じことだ。
だったら、何が起きても対処できるように日々精進し続けるのみ。
それだけだ。
「そう……ですか。残念です、やはりあなたとは気が合わないのですね」
「そんなん入学式の時から分かってることじゃねぇか。今さら言うことじゃねぇな」
「ええ、ご尤もです。では、お邪魔しました、失礼します」
手のつけていないイチゴ牛乳をハンドバックにしまうと、一枚の紙を残しやちるは帰っていった。
ただ一言、「友達には感謝した方がいいですよ」とだけ言い残して
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