第三章:蒼天は黄巾を平らげること その5
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うに天を仰いで溜息を漏らし、それを春蘭が首を傾げて見ていたそうだ。
ーーー軍議の後ーーー
大した時間もかからず、太陽が茜色に輝くより前に軍議はまとまった。誰が最初に当たって敗北を装うかで互いへの牽制が生じかけたが、皇甫嵩がこれを快く引き受けてくれたおかげで軍議は留まる事がなかった。あとは計画通りに動けばいいだけだ。
軍議が解散して少し時間を空けた後、曹操は例のごとく夏候姉妹と仁ノ助を連れてーーーまたも自分を傍に置いてくれない事に、荀イクがぎりりと歯軋りをして悔しがっていたが、華琳に頬を撫でられて何事か囁かれると即座に機嫌を取り直して見送ってくれたーーー、とある場所へと向かっていた。そこへ辿り着くまでの道中、官軍の諸侯らの兵達には見られない純朴さと優しさがある一般兵から、まるで珍しい生き物を見るかのような視線を注がれていた。その対象は華琳が半分、そして彼女の後ろを歩く喧しくも忠実なる三人の配下であった。
「・・・なあ、春蘭」「なんだ」
「本気で乗り込むのかよ?義勇軍の陣営に」「華琳様が望まれた事だ。我等が口喧しく抗議するべきではないだろう」
「それは分かっているが・・・でもさ、さすがに美髯公を引き抜くっていうのは無理があるんじゃないか?なんでも関羽は義理堅く、あの桃色の髪をした女性の義姉妹とかって噂がある。自軍を離れるってのは想像し難いが・・・」「華琳様の御深慮に口答えするな!私とていらぬ女が加わるのは気に入らないが、それでも華琳様のためならばぐっと我慢できるというもの!お前も少しは抑えろ!」
「なんだよ、春蘭は華琳様の説得が成功すると?」「当然だ!華琳様の御誘いを受けぬ者など人間では無い!いかに『はーれむ』が大きくなろうが私は一向に構わん!なぜならな、誰よりも寵愛を受けるのは私でかく・・・か、かく・・・?」「確定?」「そう!カクテイなんだがらな!」
「凄いな。いつも凛々しく大声で話す姉者が囁くという芸当を行っている。それでも普通の人間にとっての話し声の域で華琳様に全部聞かれているのだが、努力しようとする献身ぶりが良い。姉者は本当に可愛いなぁ」
「頼むからあなた達全員が囁くという高等芸当を覚えてほしいわ。何なのこれ。何で私にこんな視線が突き刺さるのよ。私じゃなくてこいつらに向けてよ」
表情の泰然とした様とは対照的に、口からは内心がダダ漏れであった。段々と義勇軍の将らが集う大きな天幕へと近づいてきた。劉備三義兄弟、否、三義姉妹が興した義勇軍の本陣である。
天下の英雄たる器を備えた侠の人間、劉玄徳。仁ノ助はこのような認識をもって三国志を捉えており、劉備とその兄弟に対して、世間一般でいう義に篤い者達としては見ていなかった。この世界では有名武将が軒並み性転換を果たしているが、その性格も史実通りであるのか。だ
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