第三章:蒼天は黄巾を平らげること その5
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の様子でしたが・・・策は来まったようですね」
「うむ。諸君らの活発な議論の御蔭で、大体の状況は把握出来た。さて、わしの案を披露させてもらうとしよう。何かあればすぐに指摘してくれ」
そう前置きすると、皇甫嵩は自らの考え説き始めた。纏めると次のようになる。
賊軍側は官軍を何度も打ち破ったせいで自分達が優位に立っていると誤認しており、ここでまた勝利を積み重ねれば、その油断は決定的なものとなるに違いない。この隙を突くべく、まず最初に賊と正面でぶつかり、早々に退却してわざと敗戦を装う。援軍何するものぞと賊軍は油断をさらに晒すであろうし、それゆえに拠点の防備を緩めると予測される。それを逃すことなく、攻撃の翌日の払暁、人が最も油断する時に連合の兵力を結集して、大奇襲をかける。敵が態勢を整えるより前に城門を突破し、城を攻め落とすのである。
ようは質と量を頼みとする短期決戦であった。荀イクのような兵法家にとってはつまらぬ戦いとなるだろう。だが他の策を用いたとしても、賊軍の投降以上の戦果が見込めるとも思えない。賊たちに負け続けたせいで、いい加減に兵達にもフラストレーションが溜まっている。歴戦の諸将らは首を縦に振らぬ選択肢を持ち合わせなかった。
「華麗とはいいませんが、悪くはないですわね。一撃を加えるのみで、彼らは本拠地を明け渡すことと成るでしょう」
「私も同意です。攻撃の先鋒には、どうぞ私の白馬義従をお使いください。戦況を有利なものと致しましょう」
「・・・私も異論はありません。で、そちらでずっと黙っておられる義勇軍の指揮官は、どのように考えているのかしら。意見があるのなら言いなさい」
曹操の言に合わせるように諸将が彼を見た。己へと集中する視線に天の御遣い、北郷一刀は思案から復帰して顎から指をおろすと、しっかりとした瞳で皇甫嵩を見詰める。若々しさのうちに情熱を感じるやや高めの声が、彼の口元から毀れた。
「作戦自体に、私達の方も異論を唱えるわけではありません。喜んでお手伝いいたします。ですが、一つお伺いしたい事が」
「赦す。聞くがよい」
「・・・先程、公孫讃殿が敵陣より立ち上る紫色の煙について言及されていました。紫の煙など、狼煙ではそのようなものが上がるはずもありません。また敵は士気旺盛にして、数も相当のままです。あれが降伏の意を伝えるものとも思えません」
「そうであろうな。続けよ」
「もしかしたら敵は・・・こんな馬鹿げた問いなど一笑して下さっても全く問題は無いのですが・・・何か呪いのような、あるいは儀式でも執り行っているのではないでしょうか。敵将の張角は決起する際、仙人より妖術の書を授かったといわれております。仮にあれが書に記載されているであろう、禍々しい術のための準備であった場合、私達の攻撃に合わせて敵が何かしてくるやもしれ
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