第三章:蒼天は黄巾を平らげること その5
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もの?」
「はい。人の手とは思えぬ、紫色の煙が広宗に登っていたと」
皇甫嵩は首を捻って思案し始めた。沈黙を潰すように袁紹が今の言葉を一蹴せんと声高に論を打ち始め、公孫讃はそれを否定するべく言葉を返す。彼女等の付き人もそれに巻き込まれる形で、それぞれ意見を述べていき、軍議は喧しさを募らせていった。誰もが好き勝手な論調で続けていき、袁紹と公孫讃の部下同士に至っては不信をぶつけ合っていた。こんな調子でこの日まで連合を保っていたのだろうか。
「なぁ、秋蘭。こんなので大丈夫なのか?頼りになりそうなのがいないぞ」
「何を言う姉者。袁紹殿が頼りにならないのは今に始まった事じゃないだろう。結局、自分達の力こそ、最良の刃と鎧になるんだ」
「それは分かってはいるのだが・・・しかし、なんだかなぁ。期待外れな展開であるのは変わりがないよ」
夏候姉妹は互いに目を合わせ、小さく肩を竦め合う。自分達の軍議では誰しもが自由に意見を述べる事ができた。だがここまで無法図にやっていいものではないし、何より仲間を信頼しない状態で行われる軍議など俄かに信じがたいものであった。
仁ノ助も主の手前、勝手な発言をする事無かったが呆れを覚えざるを得ない。あと一歩で賊が討伐され、一先ずの平和がやってくるのだからちょっとは自律したらいいものを。だがそれが出来ないのが諸侯であり、それを糺そうとしても今更無理であろう。仁ノ助は場の流れ、そして主の動向に注意を向けて時を潰さんとしていた。
(・・・いやいや、俺の主はぶれないね、ほんと)
乱世の奸雄は我関せずといった感じあった。泰然とした態度で腕組みをし、軍議に参加する諸将らを、とりわけ喧々とした犬のような真似をしない分別を弁えた物静かな将達を、値踏みするような視線で眺めている。ともすれば引っこ抜いて自陣に加えようという魂胆であろう。流石は人材マニアといったところだ。
だが努力の甲斐むなしく気に入るような者を見付けられなかったのか、曹操は最後にぐるっと諸将を見詰め、天の御遣いを見定める。視線は長らくポリエステル素材の服へと向けられていたが、それも飽きたのだろう、喧騒を増していく軍議に「なんにせよ」と、冷水のごとく言葉を投げかける。皆は静まり返り、すぐに軍議に相応しき意気を取り戻した。
「なんにせよ、私達がやる事に変わりはないわ。敵を蹂躙し、漢室の御世を脅かさんとする賊徒を屈服させる。それがするために私達は集った。違わないかしら?」
「何を当然の事を申されているのです、曹操さん?名族の出である私がそのような事を失念するとでも?わが軍が進むは勝利の道。道草を眺めて愛でる趣味などありませんわ」
「ならばとっとと軍議を進めたいのだけれど。時間が進むにつれて、刻一刻と民は傷ついているのだから。皇甫嵩殿。先程から何かお考え
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