ルリム・シャイコースとの戦い T
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の目の前。顔まであと数センチ。そこに、リルム・シャイコースの顔が存在した。眼球の無いその目からは、血のように赤い球体がポロポロポロポロとこぼれ落ち、地面へと溜まっていく。舌も歯もない白い口腔が、まるで喋っているかのように開閉を繰り返し・・・ニヤリと、彼女を嘲笑った。
『無駄なことをしたな。貴様は、もうどこにも行けんよ。例え俺が殺されたとしても、貴様はここから離れる事が出来ん。』
その言葉に、今度こそ全ての希望を打ち砕かれた。今までは、もしかすれば【聖魔王】様が倒してくれれば、この体も元に戻るのでは?と、淡い期待が胸にあったのだ。しかし、それも当然だろう。権能によって変質したものは、原因が消え去っても残る。
代表的な例では、数年前にアメリカに現れた、ギリシア神話の月と獣の女神アルテミスだろう。彼女の権能で獣へと変えられた人間は、その神が倒された今となっても動物のままである。
『クハハ、どうだ?偽りの希望を胸に抱いて走った気分は?お前の叔父とやらも、随分と心配していたぞ?俺がお前を殺すわけがないのになぁ!』
聞かれてもいないのに、上機嫌にテレパシーを放ち続けるルリム・シャイコース。
『この空間に入ってきた一般人は、全て氷の彫像へと変化する!耐性のある神殺しが来たとしても、貴様はここから出られん。・・・貴様は、永遠にここで過ごすのだ。たった一人でな。』
「・・・っ!!!」
彼女は今、理解した。
彼女が一度、この神の元から逃げ出せたのは、偶然でも、定敬の決死の行動のお陰でも何でもない。薄い氷の刃が彼女だけを貫かなかったのも、その後にこの神が追いかけて来なかったのも、全てはこの為。
現実を認識させて、彼女を絶望の淵に叩き落とす為!
それを見て、嘲笑う為!
それだけの為に、彼女を逃がしたのだ!!!
余りに・・・余りに惨たらしい。これが、悪神の中の悪神。これが、クトゥルフ神話の邪神である!
「あ・・・あ、あ・・・!ああああああああああああああああああああああ!!?」
頭を抱えて目を見開き、彼女は絶叫を上げた。声も枯れよとばかりに叫ぶ。白い光に耐性を持たされた者は、クトゥルフの神共通の、狂気の権能に対する耐性も獲得する。・・・だが、あまりの恐怖や絶望で狂う事は防ぐことが出来ない。
彼女は今、理性という名の防壁を、恐怖という名の攻撃で打ち破られそうになっていた。
―――しかし。
壊そうとする者がいれば、直そうとする者がいるのも必然。
恐怖に蹲る者を嘲笑う者がいれば、恐怖に蹲る者を救おうとする者がいるのも必然。
人を人とも思わぬまつろわぬ神が居るのなら、それを殺す神殺しもまた、現れるものである!!!
「お前・・・何してんだあああああああああああ
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