黒麒麟動く
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顧みずにそのような策に走る事は無い。
田豊はそれが行われる事を知っていただろうが桂花の言葉を信じるなら止める事が出来ない。
命を散らせる覚悟を持たないモノを蹂躙しようとする者達に怒りが湧く。
愛しい戦が穢されようとしている事を理解し憎しみが心を燃やす。
だがまだ起こるとは決まっていない。
心を鎮める為に言葉を反芻し、次なる思考を開始する。
そのような事態が起こったならこの戦はどう動く。どう動かす。
瞬く間に積み立てられる思考の中で自分が望む結果に持って行くための解を一つ得た。
「誰かある!」
「はっ」
「荀ケに隊の半数を率いて夏候惇と合流させよ!」
あちらはこれでいい。もう一つの方は私が行きたい所だが……
「沙和」
「はっ!」
「凪と合流し桂花の抜ける穴を埋めなさい。それと徐晃が城門に向かったなら二人でその後を追うように。中での判断は民の救出優先。規律の厳しいあなたの隊なら出来るわね?」
「御意なの!」
これでしばらく様子を見ながら、かつ迅速な対応もできるように変化させられた。
沙和も凪も黄巾の時にそのような場合の対応に慣れているので一番的確な判断が出来るだろう。
考えているとふと一つの疑問が起こった。
一体劉備軍の誰がこの可能性に気が付いたのか。同時に一人の飄々とした男が思い浮かぶ。
そうね、あれでなければ考えつかないか。
あの軍は甘い思考に縛られている。悪の思考は本能的に拒否してしまうだろう。
本来ならば軍師達はそんな狭い籠に捉われたりはしないが、理想という甘い罠にかかってしまえば話が違う。
せめて狂信者になれば良かったのに妄信者になってしまった者達の哀れな軍。
たった一つ、内にある解毒薬があの男。今回の徐晃の突撃は仲間の心配を無視したモノ。しかしその行動の真意が伝われば全てが大きく成長できる。
これでこの戦が終わるとあの軍は大きくなると確信できた。
その考えに至り先ほどの昏い感情など嘘のように晴れやかな気分になった。
「あの男がそこまでできるほど劉備が成長したという事か」
†
「雪蓮、劉備軍から伝令だ」
戦場の空気に当てられてか妖艶な笑みを携えて戻ってきた自分の主に報告を行う。
「どんな内容?」
「董卓が洛陽を戦火に沈める可能性あり、もし煙が上がったなら徐晃が道を切り拓くので続いて欲しい、らしいわ」
あり得る事だと思う。確かに連合の発端と袁家のやり口と照らし合わせれば董卓が行わなくても起こりうる。
「そう、やっぱり敵を広げて呂布隊の被害を増やしておいてよかったわね」
「……また勘か?」
頭に手を当て苦い顔で片目を瞑り、開いている目で私を見やりながら尋ねてくる。
「どっちにしろ洛陽内部に進行するには手薄にしておくべきだったしね」
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