黒麒麟動く
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悟の色。
私の心はその言葉と瞳に吸い込まれて行く。
ああ、これか。これが本当の……。
覚悟の大きさが違う。違い過ぎた。
彼の瞳から目が離せず、自分の心臓が大きく高く鳴っているのが聴こえる。
この人が言っているのは私達の言葉の責任を取ると言う事。
命を預かる立場の私達が口にし、表明した参加理由は行動で示さなければいけないモノ。
私はどうしてそれを放棄しようとしていたのか。
彼が……彼だけが私達の想いを貫いていた。返す言葉はもうここで決められていた。
「ま、まだ起こると決まったわけではありません。しかし事が起きた場合は……慎重に時機を見て行ってください。それと洛陽内でも絶対に無理はしないでください」
洛陽が火に沈む事は起こる可能性としては一番高い。今まで姿を現さなかった董卓は逃げる時も姿を見られる事を恐れるはずだから。
じわじわと不安と心配の気持ちが心に広がり、それでもこの人を止められるわけ無かった。思考の中では、それはいけない事だと分かっている。本当なら他の軍に任せて耐えているべきだ。でも私達の理想がそれをさせてくれない。
「二人ともありがとう。それと、無理を言ってすまないな。……その時は俺達の本陣は任せた」
言葉と共に頭を優しく撫でてくれる。
この人はズルい。覚悟の大きさと優しさでどうしようもなく人を惹きつけてしまうから。
誰かの心配も分かっているくせに、向けられた想いを振り切る事に心を痛めながらも進んでしまうから。
「曹操さんと孫策さんに伝令を。愛紗さんにもです」
せめて万が一が起こらないように万全を期すのが私に出来る事だ。
「じゃあ俺は桃香を説得してくるよ」
「いえ、私が説得します。させてください。だから秋斗さんは雛里ちゃんと戦場を見続けてください」
この人の強い思いに応えたい。私は今になって初めてこの人の事が少し理解出来た気がした。
†
劉備軍からの伝令が私の軍に予測を伝える。
『董卓が逃げる為に洛陽に火を放つ可能性あり。もし煙が上がったなら機を見て徐晃隊が城門に突撃をかけるためそれに続いて頂きたい』
董卓は確かに傀儡だが逃げるにしても民に被害を与えるような落ちぶれた事をするわけが無い。そのような主に張遼が仕えるとは思えない。
しかしそこである思考に至る。
董卓が悪でないならば悪に仕立て上げる。それを平気で行ったのが連合ではなかったか。
総大将の後ろの者達はより確実な勝利をもぎ取るために手段を選ばない。
その考えが抜けていた事に気付き、ギリと歯を噛みしめ、振り返って袁紹軍を睨む。
お前達は民を苦しめ、私の戦を最後に穢していくのか。
麗羽も田豊も関係ないのは分かっているがそれでも睨みつけてやらねば気が済まない。
臆病な麗羽が自分の危険も
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