黒麒麟動く
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強行突破かと」
逃げるなら望みの薄いモノだがそれしかない。軍として抜けて再起を計りたいならばそうするべきだ。飛将軍もそのために今は内側で戦っているのかもしれないという考えに納得が行った。
一瞬もう一つの考えが頭を過ぎったがそれはないと心が拒絶する。たまに現れる黒い獣は倫理を無視した策を私に甘く囁く。
「董卓が悪なんだろう? ならば他には何がある?」
彼の放った言葉に思考が凍り、吸い込まれそうな黒い瞳に私は釘付けになってしまった。他にある事柄を確信して私に尋ねているんだ。
この人はやっぱり恐ろしい。まるで自分の心の全てを見透かされているような気持ちにさせられる。一体何を見て、何を予想して、どんな思考を行って黒い獣の方の私と同じ考えに至ったのか。
そこで私は気が付く。全ての事象を抑えてこそ軍師ではないのか。何故私は今まで全てを人に話さなかったのか。これでは軍師とは言えない。既に人を殺しているくせに何を甘えた思考をしていたのか、と。
「……洛陽に……火を放つことも考えられます。そのごたごたを利用して内密に戦場を離脱。それぞれの隊が抜けた先で合流し再起を計るかと」
私が言葉を紡ぐと彼は一つ頷き続ける。
「雛里に戦況を見させ、もし煙が上がったら徐晃隊の三割の兵による突撃で手薄な所を突破し俺達が洛陽に入る。いいか?」
「ダ、ダメに決まってましゅ! 体調を考えて後陣に下がって貰ったのにそれでは意味がありません!」
彼から話された事は自分がこの前止められたばかりという事を無視した発言だった。あまりの身勝手さに怒りが湧きすぐさま否定する。
本当に無茶ばかりしようとする人だ。もし秋斗さんに何かあったらどうなるのか考えてもくれないのだろうか。
「……無茶は承知だ。戦で兵が死ぬのは……不本意だがまだ許せる。しかし民に被害が与えられるなら俺は動く。いや、動かせてくれ」
私に懇願する秋斗さんの泣きそうな表情は子供のようだった。
自分が無理を言っているという事を噛みしめて、それでも自分が何かを助けたいという純粋な想い。
雛里ちゃんも泣きそうになりながらも秋斗さんの横で耐えている。雛里ちゃんは渋々だが認めたという事か。
きっとその状況になれば桃香様も同じことを言うだろう。劉備軍大将の突出などさせられるわけが無いので却下だ。愛紗さんと鈴々ちゃんは飛将軍防御に必須なので呼び戻せない。敵の主力の将が全て城壁外に出ている今、私達の軍で一番対応に向いているのは徐晃隊で間違いない。
今この時に話しに来たのは愛紗さんと鈴々ちゃんが反対するのを分かっていたからなのか。それとも戦況を見ての判断なのか。
「他の軍に任せるならこの軍の存在意義が無くなるだろう?民のために立ったなら、命を賭けて為すべきことだ。違うか?」
強く明るい光を携えた瞳は覚
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