黒麒麟動く
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たよ。それくらいできなければこの厳しい状況は覆せません」
勝利のみに意識を向けていればそうできたはずなのに。向こうの軍師は敗北に思考が向き始めているから安全策に走っている。それではいくら飛将軍がいても勝てないと言っているようなものだ。
「……雛里はやはりすごいな。さすがは大陸一の軍略家だ。味方で良かった」
「そ、そそそこまでしゅごくないでし、あわわ……」
秋斗さんに大陸一とまで褒められて照れてしまい噛み噛みになってしまった。
肝心な時にこれでは締まらないのに。後ろに構える副長さん達以下徐晃隊の面々からも笑いが漏れている。
「クク、俺は本当にそう思っているよ。雛里と一緒なら徐晃隊はどんな軍にも負ける気はしない! お前達もそう思うだろう!?」
後ろの徐晃隊は秋斗さんのその問いかけに強く「応」と返してくれた。いきなりの大きな声に前にいる愛紗さんの隊の兵も鈴々ちゃんの隊の兵も何事かと驚いてこちらを伺っている。
私は真っ直ぐに徐晃隊の人たちと目を合わせてみる。彼らの瞳は秋斗さんと私に対する信頼が見て取れた。
自分達の命を預ける、という強い想いが伝わってくる。
私はその想いに応えたくなって口を開いた。
「わた、わたしゅは……あわわ」
多くの人の目が集まりすぎてまた噛んでしまった。恥ずかしくて赤くなったであろう顔を隠すために帽子を下げて俯く。
しかしまた笑われるかと思ったが不思議と一つも笑い声はなかった。
「大丈夫だ雛里。落ち着いて、ゆっくりと自分の言葉を紡げばいい。あいつらはお前の言葉を待っているぞ」
そう言われ顔を上げると徐晃隊の兵達が暖かく微笑みながら頷いているのが見えた。
「わ、私はあなた達のために大陸一となりましょう。あなた達全ての想いを繋ぐために。平穏な世を作るために」
自分の想いを言い切ると彼らからわっと声が上がる。秋斗さんはいつも口上をするとこんな気持ちだったのか。胸に灯った火が大きく燃え上がり力が湧いてくる。
気持ちが高揚してきて意識を前に向けようとしたら隣で突然秋斗さんがすっと剣を上げ、それを見た徐晃隊からは全ての声が消えた。
「今、我ら徐晃隊には鳳凰が付いている! どんな事が起ころうとも全てを読みきり、躱し、防ぎきる大陸一の最強の羽だ! ならば俺達黒麒麟は鳳凰に従い、畏れず前を見、その角で迫る敵の全てを切り裂くのみよ! 謳え! 我らの想いを紡ぐために! 乱世に華を! 世に平穏を!」
「「「「「乱世に華を! 世に平穏を!」」」」」
重なる声は全てを呑みこむかのようだった。紡がれた言葉は彼らのみに伝わる合言葉なのだろうか。
徐晃隊の結束力は劉備軍で一番。いや、他の軍でもこれほどのものは無いだろう。
想いの共有と意識の統一。死の恐怖も戦場の狂気も跳ね除けるほどの力強い信念が感じられ
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