洛陽にて
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。全ては孫呉の大望のために。
蓮華は内を守る盾。民草の心を学び、王としての成長を行っている真っ最中。
未だ不完全な彼女をこの黒い欲望渦巻く連合に連れて来て学ばせる事も出来たがそれはまだいい。私が上手く出来たならそれが一番だから。
「蓮華様の成長を促すために亜紗を残し絆を深く繋がせる、か」
孫呉の古参を全て連れてきたのはそのため。新たな世代の絆を深く確固たるものにさせなければならない。
「目先の敵が多すぎてあいつらは気付かないわ。私たちは牙を研ぎながら時機を待つだけよ」
「ふふ、牙を鋭くするくせに爪でも引き裂くのだからお前も人が悪いな」
物騒な事を楽しそうに言う。その笑顔を見て心の苛立ちは消え、午後の陽だまりのように穏やかな気持ちになった。同時に私はいつも彼女に支えられて、本当に世話をかけていると実感する。
「……いつもありがとね、冥琳」
ふいに私から放たれた言葉に少し照れたのか、彼女は変な顔をしてこちらを見ていた。
「……急にどうした?」
「急に言いたくなったの」
答えると彼女はため息をつき微笑みながら一言呟いた。
「相変わらず訳がわからん奴だ」
酷い言い草。けどその言葉の裏にある信頼が心地いい。
共に並び、支え合えるものがいる、というのはそれだけで安心できる事だ。
冥琳とならどこまでも進んで行ける。
このうさんくさい連合も後少し。そうすれば本格的に私たちの目的に取り込めるだろう。
今はこの戦を早く終わらせる事を考えましょう。
†
この戦の終着は全ての王に機会を与える。
一人の王を排除することによって。
董卓は洛陽に火を放ち、長安まで逃げた。
正史の事実はそうだった。
この世界では……決戦を行い、死中に活路を求めて抗うつもりだ。
だが一発逆転の目はこの時代の戦争ではあまりに少ない。
既に後手後手の状況でどうやってひっくり返そうと言うのか。
連合の不和と糧食の減衰を狙っての長期防衛も行えなくなり、夜襲も奇襲も行えないほど攻められ続け、不利な兵数での決戦に持ち込まれたこの状況で。
あるとすれば連合側の単純な手柄の食い合いか飛将軍の押し付け合いという隙を使うくらい。
だがそれも望みが薄い。やはり決戦ともなればこちらに分がある。
負けが確定したなら董卓はどうする。
逃げるか、腹を括って戦で死ぬか。
今まで一度も姿を現していない董卓は必ず逃げると思われる。
例え巻き込まれたにせよ、火種を撒いてしまった責任を放棄して。
だが逃げても再起を計るなど不可能。連合はどこまでも追っていくし世は董卓を悪と断じているのだからどこも助けてはくれないだろう。
どの諸侯の軍師も俺の思考の先に思い描いている展開程度は軽く読んでいるはず。
なら俺は今回、後
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