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乱世の確率事象改変
洛陽にて
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げるのです」
 今回の責任の所在は月だけになすりつけられる。皆は地の果てまで追いかけられる事はないだろう。
「でも月は逃げても地の果てまで追いかけられるのよ?」
「姿を知っている者はねね達と涼州の者以外ほとんど死んでいるのですよ。それに連合の目的は権力争いのため洛陽の制圧と帝の身柄確保。例えば董卓がすでに殺されたとなれば……」
 ここに来てから月の暗殺を警戒し、姿をあまり見せないようにしてきた事が功を奏したというわけか。
 ただ最後の詰めを誤ったのが痛すぎた。帝がこの洛陽から連れ出されていた事に気付けなかった。
 月の誘拐を警戒しすぎてそこを疎かにしていたのはこちらの失態。誘拐を企てていた十常侍は見せ札で本命はそちらにあったということだ。
 今はもう終わったことを考えても仕方ない。もしもの時の事を考える。
 決戦のごたごたで屋敷の一部を燃やし敗北を悟った配下に裏切られ董卓は焼死……したように見せかける。そんな筋書が頭を過ぎった。
 ただしこれをするともう董卓という名は今後は使えない。別人として生きる事が必須条件。
「そう……董卓殺しの汚名を被るのが誰か、と言う事ね」
 決まっている。ボクが被るべきだ。
「あんた達は戦っていて内部状況が分からなかった。もし負けそうになった時、敗北を悟ったボクが董卓を裏切って屋敷の離れを燃やし月を一人だけ逃がす。反論は受け付けないわ。これはボクの仕事、誰にもできないし渡せない」
 そこまで言い切ると皆一様に哀しい瞳で見つめてくる。
「詠も一緒に逃げるのですよ。誰かが月と一緒にいてあげなければ心が壊れてしまうのです」
 ねねに言われて気付く。
 そこまで考えてなかった。自分が残って言い訳を取り繕おうとしたのだが、確かにあの子を一人にはできない。
「せやな。何が何でも守りきりや。例え月が反対しても、や。けど戦場を逃げ出した卑怯者の汚名も裏切り者の烙印もついでに被ることになんなぁ」
 霞の言葉に覚悟を決める。これは一方的な押し付け。そこまでしてでも生きて欲しいという私たちのわがまま。ただ生きていてくれるならボクはどんな汚名も被る。
「……わかったわ。その時は必ず逃げ切って見せる。どんな手を使おうとも。けどあんた達、勝てばいいのよ! 皆で月を大陸の王にするわよ!」
 勝つことが出来たなら、全ては変えられる。ほんのわずかな望みだがそれに賭ける。
「ははは、詠らしいこっちゃ。そうと決まれば決戦のために少しでも休んどこか。ほら、恋もおねむみたいやし」
 霞の言葉に皆が頷く。恋は話に入ってこないと思ったら本気で熟睡しているのかよだれが口の端からつたっている。
 その愛らしい姿に笑みが漏れ、この優しい仲間たちが無事で生き残れるようにと自分は決戦の準備の指示を出しに向かうことにした。



 聞
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