洛陽にて
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ようとすることは将ならば陥りやすい状態だ。劉備達の対応は徐晃を思っての事であり、軍としても当然の事だ。しかしあの男が止められながらもそこまで自己の感情を優先して行動しようとするとは思えない。
ただ先を見据えるあの男は目の前の百よりも後の万を優先するはず。いや違う、どちらも救うために本来ならば他の将に任せる事を躊躇ったりはしないと言った方がいい。
自分の力に驕っているわけではないだろう。呂布に打ちのめされてそれでも自分が全てを救えるなどと欲深い事は考えないだろうから。
つまりあの男はまだ劉備達を信頼していない。目の前の百を救うために怪我を押してでも自分が戦いたい、他の者にその仕事を預けたくないということだ。
思いやりと効率のために引き下がっただけ。まだその程度しか信頼関係を築けていない。
傲慢だと言えるがそれもこの軍だから起こりえること。
「ふふ、徐晃らしいわね」
目の前の二人はその事に気付かずただ首を傾げている。これは私がわざわざ答えることではない。
あの男はさぞ辛い事だろう。徳のみを掲げる者達の中でただ一人違うモノを持っているのだから。
結局力に頼った劉備に矛盾を感じながら苦しんでいる。既に心配を素直に受け取れないほど壊れ始めているのか。この戦が終わったらもう一度話してみるのもいいかもしれない。
「こちらも一つお聞きしたいのですが曹操さんは秋斗さ、徐晃さんに対して何を感じておられるのですか? 黄巾の時もお気になさっていたようですが……」
諸葛亮の探りの言葉。今度は先ほどとは違い少し警戒しながら尋ねて来た。
「……そうね、今後の働きに期待しているといった所かしら」
皆まで教える必要はない。この程度では対価としては少なく見えるが諸葛亮にとっては大きなモノになる。
「そう……でしゅか」
しゅんとする諸葛亮は久しぶりに見たけど愛らしいわね。
この子は少し徐晃の事に気付き始めているのかもしれない。いや、分からないからこそ他の視点からの判断が知りたいのか。私の少ない言葉で彼女が徐晃にもっと興味を持ってくれたらいいのだけれど。
「曹操さん、うちの将を気にかけて頂きありがとうございます」
にこやかな笑顔で言う劉備。私をも信じて疑わない目、この真っ直ぐさが庶人を惹きつけるのだろう。
ただそれは甘い毒になる。特にあの男に対しては。
しかし劉備もどこか変わったか。少しは成長したようにみえる。
自身に満ち溢れているというか……言葉一つにしても一本芯が通った強い力を感じる。
この調子であの男がこれからも上手く影響を与えてくれたらいいのだが。
「……どういたしまして。質問に答えてくれてありがとう。また次の軍議で会いましょう」
言って両者共振り返りそれぞれの軍に向かい歩く。
まだ足りない。
乱世
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