Z:打開策と決着
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傷を残す攻撃で――――
「グオォッ…!」
遂に騎士の体勢が完璧に崩れ、二歩程ではあるが後ずらせ、体力も若干ながら削ることに成功したのだ。
しかし不味い事に、大技を叩き込んだキリトには大きな隙が出来てしまったうえ、騎士の方が硬直時間が少ない。これを騎士が逃す筈がないだろう。
助けに入ろうとしたアスナとエギル、そしてせめてダメージを減らそうと何とか剣をもどそうとするキリトは……予想外の光景を目撃した。
その機械騎士はキリトの元へは行かずに剣を拾いに行き、拾った直後に剣を虚空にかざして鈍く光らせ、消したのだ。
「な……?」
「え…?」
「……?」
困惑する三人へ騎士は向きなおる。慌てて構えた三人に騎士は―――――
掌と拳を合わせて“礼”をした。
そのまま騎士は彼等に背を向けて歩きだし、次の瞬間にはHP0の時とはまた違う、粒子の様な物を撒いて消えた。
「勝った……のか?」
「すっきりしないが……そうなんだろうな、恐らく」
顔を見合わせるキリトとエギル。アスナは騎士が去って行った方向を見やりながら、呟いた。
「なんだか、闘い方といい、最後の礼といい……AIっていうよりも人間に近い様な、そんな気がする……」
「ああ……フェイントも混ぜるなんて、人間みたいだった」
「それだけじゃないの―――なんか、最後に消える時とっても満足そうだった気がしたから」
「満足そう…?」
「うん。何だか“よく一撃を入れ、自分を後退させる事が出来た”って感じで、敵っていうより師匠みたい」
「噂の事といい、何なんだろうなあの機械甲冑は」
エギルは頭を掻きながら呟くも、その問いに答えられる者などいない。
「それじゃ、誰が四層の転移門をアクティベートしてくるの?」
「俺が行こうか? キリト、もうヘロヘロみたいだからな」
「……んあ……しばらく動きたくない、頼むぜエギル」
「分かった」
そう言うとエギルはボス部屋の奥の扉へと足を進めた。
へたり込んだキリトは、傍らに居るアスナをちらと見た後、上を向きながら呟く。
「なんか、さ」
「ん?」
「あいつとはまた会いそうな気がする……かも」
「止めてよね。あんな反則的なモンスターと戦うのはもうコリゴリなんだから。でも噂の事もあるし……四散せずに消えたのをみると、そうなりそうで怖いわ…」
「だな」
可笑しくは無い筈なのに何故か笑いがこみあげ、笑いだすキリトとアスナ。
――――その後キリト達は、あれほど苦戦したボス戦だったのに死者が0人だった事に驚き、あれほど苦戦したのにドロップ品が無かった事を悔しがるのだった。
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