暁 〜小説投稿サイト〜
誰が為に球は飛ぶ
青い春
玖 塩のときめき
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活の体裁が整ったクラブである。同好会的で、ユルくそれぞれが好きな楽器に親しめばいい、という音楽部に対して、キッチリ練習して、全員で一つの音色を奏でる為にやっているのが吹奏楽部だった。同系統のクラブとはいえ、真司は音楽部だった時も吹奏楽部と交流した事が無い。それぞれがそれぞれの領分を弁えていた、という所だろうか。


(…?)
真司はステージに姿を現した吹奏楽部員の中に、一際目立つ見た目をした女の子を見つけた。短めの髪は、明らかに色素が薄い。水色に見える。こんな髪があるのか、と思わずには居られない。染髪にしたって、水色なんかに染める奴が居るだろうか。色素が薄いのは髪だけでなくその肌もそうで、病的に思えるほどの白さがスポットライトを反射して際立っていた。アルビノである。近しい人では薫がこんな見た目だが、身近に1人居るだけでも珍しいと思っていた。
何より真司が驚いたのは、その女の子が高等部の制服を着ていた事だ。こんな目立つ見た目の子が同じ校舎に居るというのに、自分は気づいてなかったというのだろうか。

(やっぱりもう少し他人に興味持たなきゃダメなのかなぁ)

頬杖を突きながら、いつか薫に言われた事を思い出して真司はため息をついた。


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文化祭の片付けの後、帰りのモノレールに乗った時、真司は体の節々が痛んだ。文化祭で練習が二日間休みになるからと、その前日に日向はメニューを倍にして野球部員の体を追い込んだ。そして筋肉痛になった所、文化祭の二日間も立ち仕事ばかりさせられていたら体も痛んでくる。

腰を落ち着けると、今日見たあのアルビノの女の子の事が自然と思い出された。吹いていたのはトランペット。ソロパートでは、空に抜けていくような晴れやかな音色を披露していた。
吹奏楽部全体としても、それなりに聞き応えのある演奏をしていたが、その中でも「デキる」方だと思う。

そんな事を思いながら、ふと車両の隅に目をやると















居たのである。あのアルビノが。


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普通なら、真司は自分から話しかけるような事なんて殆ど無い。ただ、この時ばかりは違った。
話しかけなければいけないような気がした。自分の「他人への興味の無さ」の権化がそこに居るような気がした。克服せねばならない、という義務感に駆られた。

話しかけた所、その反応は実にしょっぱいものだった。塩対応である。しかし真司はその対応を「悪意」「拒絶」とは受け取らなかった。そこに「不器用さ」を見たのである。真司は、その形の整った顎、スッと伸びた鼻、薄い唇、そして真っ赤な瞳を持つアルビノに、自分と同じく他人との距離を掴みかねている者の匂いを感じたのだった。

家の方向が同
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