会戦の幕開け
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、正確には斥候隊だがね」
クラナフは苦い表情を見せると、懐から地図を取り出した。
アレスが閉じたノートパソコンの上に、地図が広げられる。
それはこの周辺の簡単な地図だ。
同盟軍の基地と、捕虜から聞き取った帝国軍の基地。
そこのちょうど中央――帝国軍基地に近い場所に赤い印が付けられている。
「知っていると思うが、斥候隊の任務は二つ。敵基地までの進路の安全確保と敵基地周辺の調査だ。そのうち敵基地周辺の調査を任務とする一隊が、ここで敵と遭遇したとの無線を最後に連絡が途絶えている」
「本隊は?」
「本隊はここだ。既に遭遇地点を超えて、敵基地を目指している」
クラナフが指で示せば、既に敵基地に近い場所に本隊はいた。
遭遇した斥候隊が単に本隊の誘導部隊ではなく、敵基地周辺の隠し基地や避難所を捜索する部隊であった事が運が悪かった。敵との遭遇について、本隊から援軍を送る事になれば、一度進軍を止める事になる。
敵が準備を行う前に攻撃をするという当初の計画は大きく狂うだろう。
本隊は回せない。
「他の斥候隊を回すことは?」
「どれも遠い。一番近いのは」
そこで、アレスは理解した。
その意味も。
息を吐けば、答えを口にする。
「この基地から派遣する方が近いのですね」
「話が早くて助かる。すぐに出動できるか。相手の数はわからないし、戦闘が始まったことから間に合わない可能性の方が高い。だが、助けられるのならば少しでも助けたい」
立ち上がったアレスは手を止めた。
クラナフを見る。
どこか非難めいた視線に対して、クラナフは言葉を口にしない。
無理ならば他にするということも、悪いという謝罪の言葉もなく、ただただ向けられる視線は一言、行けとアレスに告げている。
それを理解すれば、アレスも
「承りました」
アレスは敬礼で答えた。
+ + +
司令官室でヘルダーは、机上の写真を見ていた。
コップにウィスキーを注ぎ、一人せわしなく指を机に叩きつける。
上手く金髪の小僧を騙して装甲車索敵の任務を与える事ができた。
もっとも索敵が成功するかなどどうでも良いことだ。いや、誰にも言う事はできないが、失敗することをヘルダーは望んでいる。そのためにフーゲンベルヒ大尉にも事情を説明して、出発した装甲車の水素電池に細工も行った。
フーゲンベルヒ曰く、二日も持たずにエンジンは停止、。金髪の小僧も、それに続く赤毛の小僧も地図データも動かず、徒歩ともなれば帰ってくることは不可能だろう。
白銀の大地に死体が二つ増えるだけだ。
だが。
「遅い」
死体の確認に向かわせたフーゲンベルヒがいまだに帰ってこない。
ある程度の時間がかかることは理解していた。
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