会戦の幕開け
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置を教えてください」
「やる気になったのはいいが、何か私が損している気がするぞ」
「退役まで一年なんですからね。これからは夜まで教えてもらいますよ」
「夜は酒でも飲んで寝ていたいがね」
「酒なら今飲んでいるでしょう?」
「ああ、そうだな」
苦くカッセルは笑い、籠を持ち上げた。
+ + +
相変わらず、狭い執務室だ。
それでも個人にあてられた部屋と考えれば、十分だろう。
響くブリザードの音と叩くキーボードの音を背景にして、アレスはキーボードを叩き続けた。
返ってきて任務が終了する兵士とは違い、アレスにとっては帰ってきてからが仕事だ。戦闘報告書、結果報告、捕虜に対する事柄など数多くの報告が必要となり、それを作るのは他ならぬアレスの仕事である。
前世の記憶と学生時代に手伝わされていた士官学校での経験がなければ、どうすればよいか迷ったことだろう。全てを真面目に打てば、おそらくは一週間あってもしあげる事はできない。
全てに全力投球など、学生だけで十分。
戦闘結果は即座に必要ではあるが、概要さえ分かればよい。逆に捕虜に対する報告は下手をすれば公開される必要があるため、時間をかけてでも一言一句を気にして書かなければならない。策敵の報告などは基地の司令官どまりの報告書のため、余った時間で適当に打てばいい。
それら報告の必要性を分類わけをすれば、あとは打ち込むだけだ。
キーボードを叩く音が室内に響く。
と、扉の外に人の気配を感じて、アレスは指を止めた。
今日は小隊の人間には、自主訓練を命じている。
何か問題でも起きたのだろうか。
顔をあげれば、ノックの音とともに返事を待たずに扉が開いた。
「クラナフ大佐?」
驚きの声をあげたのは、アレスだった。
扉から姿を見せたのは、基地司令官であるクラナフ大佐だ。
立ち上がり礼をする様子に、クラナフは小さく手をあげて、止める。
「仕事の邪魔をしたかな」
「いえ。何か問題がありましたか」
わざわざ司令官が小隊長の執務室に来るなど、それ以外は考えられない。
案の定、クラナフは首を縦に振りながら入ってきた。
「先ほど提出した戦闘報告ですか?」
言葉にクラナフは首を振った。
「いや。簡潔で客観的に分かりやすい。報告として良くできていると上も褒めていた」
予想していたものと違い、アレスは怪訝な表情を見せた。
アレスの方に問題があるとすれば、先日の索敵の結果でしか考えられない。
だが、そんな小さな事にクラナフがわざわざここに来るだろうか。
本来ならば、指揮官室で敵基地の攻撃について指揮を執る必要がある。
そう考えて、アレスは眉をよせた。
「攻撃隊で何か問題が」
「正解だ
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