五幕 硝子のラビリンス
2幕
[1/2]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
――分史世界に入った彼らは、まず二手に分かれた。
ジュードとレイアはトリグラフに居残り。正史世界でテロ被害に遭ったはずのアスコルド自然工場へ行くメンバーは、ルドガー、エル、エリーゼ、ローエン、アルヴィン、フェイとなった。
アスコルドでは、ルドガーやエル以外と因縁があるらしきジランドという男と一悶着あったが、無事に工場の最深部、光の大精霊アスカを捕えたケージに辿り着いた。
「まぶしーっ」
ケージからは太陽もかくやという白光が放たれている。だが、光だけだ。今までの分史世界で感じた黒煙を、このケージからは感じられない。
「ルドガーさん」
「……だめだ。よく分からない」
「封印用の算譜法使ってんなこりゃ。一度撃ち落としてケージ開けるぞ。いいか?」
「頼んだ」
アルヴィンが銃を構え、トリガーを引いた。立て続けに4発。ケージの上下左右の装置を正確に撃ち抜いた。
ルドガーたちは身構えた。
「来るぞっ」
ケージの中から光球が漂い出る。光球は明滅し、やがてオーキッドの球形立体陣を結んだ。
陣の中から現れるのは、光球の2倍の体積はあろうかという、光り輝く巨鳥。
ルドガーは眩しさを堪えて目を凝らした。
(今まで見てきた〈歪み〉や〈淀み〉の感じがしない)
「アルヴィン! ローエン! こいつは時歪の因子じゃない!」
「もう分かったのかよ! ……となりゃあ、もっかい戻すか、いっそ逃がすか」
「無理やり捕まえられてたんですよね。だったら逃がしてあげたほうがいいんじゃないですか?」
「だめ」
ずっと無言だったフェイがここに来て口を開いた。
どういう意味かをルドガーが聞き出す前に、フェイは最前列に立った。
瞬きの間の出来事だった。危ない、と叫ぶ暇もなかった。
質量のない鎖が無尽に奔り、アスカを雁字搦めにして床に落とした。
「拘束術式……これほど強力な術を独力で?」
ローエンやアルヴィンが畏怖のまなざしをフェイに向けた。
算譜法に疎いルドガー、それにエルにも、フェイのしたことの凄さは分からない。
ただ、アスカを封じたフェイが、とても冷たかったのだけが分かった。
〈妖精〉が特定の個人を愛せば、世界はその者の手の中にあるも同然。
確かに、リーゼ・マクシア人の仲間たちを慄かせるほどの術士ならば、二国間の趨勢を握ることもできるかもしれない。
『おのれ、クルスニクの一族……』
その場の誰のものでもない声。
低く厳かなそれは、拘束された揺輝の巨鳥からだった。
「しゃべった!」
ルドガーはとっさにエルの前に立ち、いつでも剣を
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ