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ジュリアに傷心
第三章

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第三章

「あれだけ通ったんだからな」
「そうよね。私もよ」
「何度も行ったからな」
 けれどだった。ここで出た言葉は。
「それも最後になるけれどな」
「そうね。私もね」
「あの店にはもう行かないんだな」
「最後よ」
 こいつもだった。この言葉を出した。
 そしてだった。こんなことも言ってきた。
「ラストダンスよ」
「ラストダンスか」
「クリスマスのね」
「そうだな。最後はせめてな」
 俺はまた言った。沈んだ声で。
「精一杯派手にやるか」
「そうしましょう。じゃあ」
「行こうか」
「二人でね」
 こうしてだった。俺達はその店に向かった。けれどこれまでみたいに手はつながず少し離れて。緑のツリー、色々なもので飾られてあちこち光っているツリーを横目に見てその店に向かった。店の中もだった。
 クリスマス一色だった。ここにもツリーがあってサンタやトナカイの格好になった店員達がいて七面鳥やケーキもあって。
 それにクリスマスソング、何でもあった。その中でだ。
 俺達は踊った。クリスマスソングじゃなくてラブソングで。二人でこれでもかという位に踊って。
 それでお別れだった。二人で一緒に店を出て。
「じゃあな」
「ええ、さようなら」
 二人同時に別れの挨拶を告げて背を向け合って正反対の方に歩いていった。それで何もかもが終わりだった。
 終わってからだった。俺は。
 街を歩きながら煙草を出して火を点ける。それを吸いながら歩いていると。
 雪が降ってきた。その雪を見てだ。
 俺は煙草を手に取って。一人呟いた。
「もう一度胸になんてのは。図々しいな」
 こう呟いてから俺は消えた。夜の街の中に。一人に戻ったクリスマスはこれまで以上に寂しかった。二度と過ごしたくないようなクリスマスを過ごして。俺はその夜を終えた。そして今も一人でいる。


ジュリアに傷心   完


                       2011・8・3

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