第百四十七話 死闘のはじまりその五
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横からも城からも攻められた一向宗の軍勢は崩れ一旦退いた、これで城は何とか救われた。
柴田は騎馬隊を率いる者達と共に信興の前に来た、そのうえでまずはこう言うのだった。
「彦九郎様、ご無事で何よりです」
「うむ、よく来てくれたな」
「殿が騎馬隊だけを選んでそれがし達を先に進まされました」
それで来られたというのだ。
「殿のご英断ですな」
「兄上らしいな」
信興もその話を聞いて言う、城の主の間で具足を着たままお互いに話す。
「その辺りは」
「全くですな、しかしです」
「兄上に救われたわ」
ほっとした顔でだ、こうも言う信興だった。
「まさにな」
「そうかと」
「しかし本当によく来てくれた」
信興は自分の前にいる柴田達にも言う。
「礼を言うぞ」
「ありがたきお言葉」
「それで兄上はどうされておる」
「殿も間もなく来られます」
この城にだというのだ。
「ですからご安心下さい」
「そうか、では兄上御自らか」
「はい、長島を攻められます」
本願寺の伊勢における最大拠点のそこをだというのだ。
「そうされます」
「そうか、しかし長島の門徒は多い」
「あの、そのことですが」
ここで言うのは前田だった、彼は怪訝な顔で信興に問うた。
「噂には聞いていましたが」
「本願寺の数じゃな」
「はい、二万どころか」
「五万を超えておるな」
古木江城を囲んでいたその門徒達がだというのだ。
「だからわしもな」
「危ういところだったのですな」
「三万ならある程度は持ち堪えられた」
それ位の数だったなら、というのだ。
「しかしじゃ」
「五万を超えているとなると」
「うむ、鉄砲も多く武器もよい」
「?武器もですか」
「それが妙じゃ、鍬や竹槍だけではないのじゃ」
一向宗は百姓だ、百姓なら農具に手頃に手に入りすぐに作られる竹槍を使う。旗にしても蓆で作ることが多い。
しかし城を囲んでいた門徒達は、というのだ。
「刀に槍がな」
「多かったのですか」
「そうじゃ、弓も多かった」
「百姓が弓を」
前田は信興の今の言葉に思わず声をあげて言った。
「まさか」
「そのまさかじゃ、弓もかなりあってな」
それで城を攻めてきたというのだ。
「わしも驚いた」
「それはまた面妖な」
蒲生も驚きを隠せない顔だった、そのうえでの言葉だ。
「百姓が弓とは」
「やはりそう思うな」
「はい」
その通りだとだ、蒲生は普段の落ち着きをいささか消してしまったままで言うのだった。
「有り得ませぬな」
「鉄砲も思っていたよりずっと多くな」
それでも攻められというのだ。
「御主達が来てくれなければ城は今日にもで陥ちていった」
「ではまことに危うかったのですな」
佐々はとりあえずはそれ
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