第百四十七話 死闘のはじまりその四
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「ではよいか」
「いいかとは」
「どうされますか」
「うむ、まずは城に着きじゃ」
信興達を救う、そしてだというのだ。
「彦九郎達を救いな」
「門徒達の軍勢ですか」
「あの者達を」
「うむ、見るぞ」
そうするというのだ、彼等を。
「何者が混ざっておるのかをな」
「本願寺の色は灰色です」
このことは野々村が言う。
「ですから他の色を見ればいいですな」
「そうじゃな、ではな」
野々村の言葉に頷きそうしてだった、信長はとにかく兵を進めさせた。その先を進む柴田が率いる騎馬隊はというと。
先に城を見た、前野がそれを見て皆に言う。
「おお、見えてきたな」
「うむ、やっとじゃ」
「見えてきたぞ」
他の者達も応えて言う。913
「古木江城がな」
「見えてきたわ」
「敵は多いのう」
前野がまた言う、城を囲む敵の数は確かに多い。
だが城は囲まれていてもまだ青い旗が多く立っている、攻められているが火もあがってはいない。
それを見てだ、前野は言うのだ。
「城は無事じゃ」
「よし、ならよい」
それを聞いて柴田が言った。
「今からな」
「敵を攻めますな」
「その横から」
「そうするぞ」
それで敵の攻めを乱すというのだ。
「やるからにはな」
「徹底して、ですな」
「攻めますか」
「掛かれ」
かかれ柴田の通り名のままだった、まさに。
一向宗の大軍にかかれと命じた、その言葉に応えて。
織田家の騎馬隊は柴田の指揮の下勇将達と共に一向宗の大軍をその横から攻めた、全速で駆け勢いのまま。
攻める、青い騎馬隊はまさに津波だった。
津波が灰色の軍を撃つ、流れは一気に変わった。
「何っ、馬か!」
「織田家の騎馬隊だ!」
「いかん、この勢いでは」
「城どころではないぞ!」
指揮にあたる僧侶達も驚く、慌てて彼等に鉄砲を向けようにも。
その前に騎馬隊に踏み潰される、勢いはそのままだった。
柴田が率いる騎馬隊は本願寺の大軍を乱した、そしてそれは。
囲まれていた城兵達も見た、彼等は騎馬隊を見て思わず声をあげた。
「おお、来たぞ援軍じゃ!」
「あれは権六様じゃぞ!」
「間に合ったぞ、来てくれたぞ!」
「援軍が来てくれたわ!」
喜びの声だった、そして。
それは信興も城の櫓の一つから見ていた。それでだった。
周りの者達にだ、連日連夜の死闘で疲れていながらもまだ死んでいない目を向けてこう言ったのだった。
「よし、ではな」
「はい、今からですな」
「我等も」
「うって出る」
そしてだというのだ。
「権六達と共に戦いじゃ」
「一向宗を退けますな」
「一旦」
「そうせよ、よいな」
こうしてだった、城兵達も門を開けて攻める。そうしてだった。
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