第四十九話 柳の歌その十
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「まあとにかくわしの知っていることもじゃ」
「僅かなんですね」
「そうなんですね」
「徐々に知っていく場合もあるしのう」
牧村とのことだ、愛実も聖花も知らないが彼は戦っていた。その戦いのことは博士も様々な国の文献やそれこそパピルスや粘土板、紐文字等で知っていった。
そうしたことからもだ、博士は話すのだ。
「人の知識は僅かなものということは知っておくことじゃ」
「どんな人でもですか」
「そうなんですか」
「そうじゃ、人の力は小さい」
博士の知識もというのだ。
「そのことはわかっておく様にな」
「はい、じゃあそうしてですね」
「勉強していくんですね」
「これからもな。では今晩の泉の捜索もな」
「はい、行って来ます」
「そうしてきます」
二人も応えてだ、そしてだった。
この夜も二人で共に泉の搜索に出た、向かう場所は既に決めていた通り柳道だ。まずは真夜中の柳道の前に出た。
愛実は並ぶ柳達を見ながら今も隣にいる聖花に言った。
「雰囲気あるわよね」
「ええ、夜の柳はね」
聖花も愛実にこう答える。
「凄くね」
「如何にもって感じよね」
「特にこの柳道は学校の中にあるから」
向こうには農業科の校舎が見える、敷地は相当に広い。大学の農学部とも共有している施設や農園が多いせいか甲子園球場が丸ごと入る位だ。
その巨大な敷地も遠くに見ながらだ、愛実は聖花に話すのだ。
「雰囲気あるわね」
「そうね、何時何が出てもいい位にね」
「それでここにいる人は」
「そう、幽霊さんよね」
ここにいるそうした存在のことも話される。
「よく言われている姿の」
「ここの何処にいるのかしらね」
「いつもいきなり出て来るけれど」
そのことも気になるところだった、こうした話をしてから。
二人で柳道の中に入った、二人で左右に柳が並ぶ道を進んでいく。
その中でだ、愛実は柳道の右手を見て聖花に言った。
「あそこに誰かいない?」
「あっ、ご登場かしら」
聖花も愛実の言葉に応えて右手を見る。
「その人の」
「そうかしら」
「そうよね、ひょっとして」
「ええと、いつもいきなりの出会いだけれど」
「どうなるのかしら、今回は」
「たまにはね」
愛実はその右手を見たままこう言った。
「私達の方から声をかける?」
「今回はなのね」
「そう、そうする?」
こう提案したのだ。
「いつも向こう側からだから」
「そうね、たまにはね」
「ええ、そうしよう」
聖花が頷いたのを見てだ、愛実も決めた。
そのうえで二人であらためて右手に顔を向けて挨拶しようとする、しかしその前にだった。
その古典的な姿の幽霊が出て来た、白い着物即ち死装束を着ており頭には三角布がある。そして両手はだらりと前に垂らし
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