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八条学園怪異譚
第四十九話 柳の歌その八
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「それも間違いです」
「人種差別はですね」
「間違いですね」
「その連中が差別されたらすぐに激怒するわ」
 博士は連中については忌々しげに語った、唾棄するべき存在として。
「アメリカなり何処でもな」
「かつてアメリカでは人種論が盛んでしたからね」
 ろく子がその博士に応える。
「黄禍論が」
「あれは醜かった、しかしじゃ」
「彼等も同じですね」
「連中と二次大戦中日系人を収容所に送り込んだカルフォルニアの人種差別主義者共と何が違う」
「全く同じですよね」
「若し戦争になったら真っ先に連中にこそ注意すべきじゃ」
 確実に過激かつ愚劣な人種論を喚くからである。
「そして連中が愛しているとかいう国家に永遠の恥を残すわ」
「アメリカがそうなった様にですね」
「日系人収容所はアメリカの恥部じゃ」
 アメリカの歴史における恥として永遠に名が残っている、その時差別を声高に叫んだ薄汚い人種差別主義者共と共に。
「それと全く同じことをするわ」
「絶対にそうですね」
「あんな連中は保守ではない」
 絶対にだとだ、博士は言い切った。
「只の差別主義者じゃ」
「じゃあ真の保守とは」
「福田君や小林君の様な、じゃな」
「福田恆存さん、小林秀雄さんですね」
「深い知識と教養、そういったものにより培われた知性と愛国心を持ち」
 そしてだというのだ。
「偏見を打破する様な人達じゃ」
「広い視野を持ってですね」
「あの連中には知識も教養もない」
 そこから培われる知性もだ。
「真の愛国心もなく広い視野もない」
「偏見を打破することは出来ませんね」
「連中そのものが偏見じゃ」
 それでだ、どうして保守なのかというのだ。
「あんなものは保守でも何でもないのじゃ」
「それぞれの国に色々な人がいることが理解出来ないのですね」
「そんなことはすぐにわかることじゃ、考えればな」
 こういった連中はそうした大脳を使うカロリーの消費方法が全く出来ていないのだ、即ち脳そのものが醜く肥え太って腐り果てているのだ。
「ああした連中はそのうち消えるじゃろうがな」
「消えます?」
「そうなります?」
「偽物は消える」
 博士は愛実と聖花に確信を以て答えた。
「絶対にな」
「だからですか」
「そうした人達はですか」
「うむ、アメリカの人種差別主義者共も消えた」
 気付けばまるで煙の様にだ、残っているのは連中を批判し糾弾する言葉だけだ。連中の悪事を歴史に永遠に書き残した言葉が。
「日本でも同じじゃ」
「そうなればいいですね」
「差別をする人達が出来る限り減れば」
「連中の言うことの根拠は誤りだけじゃ」
 偏見、そして無知から来るものだけだ。
「だからな」
「消えますか」
「やがては」
「普通の人間は学ぶ」

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