第一物語・後半-日来独立編-
第六十章 解放《5》
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く、強く握ったら潰れそうだ。
セーランは感じた。
体温が伝わってくるのと同時に、震えも伝わってくるのを。
微弱に奏鳴が震えている。感激のあまりでか、それとも恐怖でか。
本人に聞けば分かるのだろうが、この状況では無理だ。
告白は成功したと言っていいだろう。しかし解放場から脱け出す必要がある。このままでは、さすがの二人も解放されてしまう。
もう奏鳴は一人ではない。
言いたいことがあるならば、自分から言いに来るに違いない。
「さあ、後はここから脱け出すだけだな」
「それはやまやまだが、一体どうやって。人類史上、解放場の結界が破られたことは一度もない」
「壊すのは結界じゃないさ」
「結界を壊さずに脱け出すのか……?」
「これを壊すのさ」
足で解放場を数回踏み付けた。
理解出来ず、驚きのあまり無言になる。
「解放場の故障なら、何件か人類史上あったろ」
確かに数件ある。だが、かと言って今の状況をどうする気だというのか。
解放されているなかでは系術は使えない。
系術は外部流魔、または内部流魔を消費して発動する。
今の状況では、系術を使うために流魔を消費しても、系術として形をなす前に解放により流魔分解されてしまう。
消費した流魔から系術を構築していくのだが、その過程で再び流魔に戻った場合、発動失敗とみなされ系術は発動しない。加護も同様だ。
セーランが知らない筈はない。
まさか自力で壊すなどと、無茶苦茶なことは言わないだろう。いや、彼なら言いそうだが。
こうなったら、やるしかないのか。
「なら竜神の力を使って――」
セーランは首を横に振る。
「駄目だ」
「大丈夫だ。今の私なら、きっと竜神の力を扱える!」
「いいか、その力は後のために取って置くんだ」
「今使うべきではないのか」
「脱け出しても、戦うべき相手がいるだろ」
戦うべき相手。結界の外。
戦闘艦の甲板上からこちらを遠目に見ている、黄森の天桜学勢院覇王会会長。
織田瓜・央信。
竜神の力は彼女と戦う時のために取って置き、解放場は別の力を使い脱け出す。
まだセーランの全てを奏鳴が知ったわけではない。心配で、不安で。でも信じたくて。
混ざり合う気持ちのなか、彼の手をぎゅっと掴んだ。
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