第一物語・後半-日来独立編-
第六十章 解放《5》
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「待ってくれよ。なら告白からやり直そうぜ。一生で一度の告白だ、ちゃんとしたものにしたい」
「ああ、そうだな」
二人は笑い、気恥ずかしそうにお互い照れる。
妙な沈黙を挟み、セーランが咳払いでそれを吹き飛ばす。改めて思えば、この解放による光はまるで二人を包むように渦巻いていた。
光によって照らされ、眩しく、しかし目の前には想い人がいる。
この上無い安心感が身を包み、一呼吸したセーランは告白する。
「この時が来るのをずっと待ってた。ちょっと違う感じだけど、最高の告白の機会になった」
一拍置いて、
「どんなに苦しくても、辛くてもさ。側に俺がいる。頼られるように強くなる。もう一人にはさせねえ」
だから。
「何かが欠けてる俺だけど、お前の側で、お前を守りたい……奏鳴……」
二度目。手を奏鳴へと差し出す。
返事が返ってくれるのを願って。
奏鳴は差し出された手を、腕を、胸を、首を、顔を見た。
身体の至るところが解放され、ほっといたならば自分より先に全身を解放されてしまう。
もう何処にも行かせない。ずっと君は私のものだ。
明日も、明後日も、一ヶ月後も、一年後も、これからも、死んでも。
側にいるよ、君の側に。
自分には家族もいない、仲間も何時かは離れていく。だけど、君だけが側にいてくれるなら。
他のものはいらない。
今はただ、君といることだけが幸せだ。
セーランに対する気持ちが、奥底から沸き出てくる。
自分だけのもの。それが嬉しい。
なら、返事を返さなければ。
告白の返事を。
「今もこの気持ちには素直にはなれないが、多分、私は君を必要としている。……だから」
だから。
後に続く言葉が上手く出せず、間が徐々に開いていく。
素直に、素直になればいい。
言い聞かせ、
「何かを失った私だけど……永久に愛して、くれるなら……!」
胸に詰まっていたものを吐き出すように、精一杯の声で伝えた。
そして右の手を、差し出された左の掌へと乗せる。
照れ臭くて、恥ずかしさから身体が熱い。
言ってしまったと、言った後に改めて思う。
セーラン。
まだ胸に残ったものを吐き出すように、口に出そう、彼の名を。
「――――」
●
『オ前ヲ死ンデモ手放サナイ』
●
セーランは聞いた。
彼女の口から、初めて言われた自分の名前を。
想い人に名前を呼ばれることに、変な違和感を感じる。照れ臭いような、気恥ずかしいような。
時期に慣れればいいが、と少し心配になった。
「温かい。人というのはこんなにも温かいものなのだな」
ぎゅっと、離れさせないように奏鳴はセーランの手を掴んだ。奏鳴の肌からは、ひんやりとした温度がセーランへと伝わっていく。
柔らか
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