理想の先と彼の思惑
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が今の桃香様の言う話し合い。
力を振るう自覚と責任を持った桃香様はこれでやっと本当の王になったと言える。
この人は救われたんだろうか。その背に背負うモノを少しは軽く出来たんだろうか。
見つめていると目が合った。その眼はいつもと違う昏い色を映している。
もう一人で背負わなくていいはずなのにどうしてこの人はこんなに哀しそうなんだろう。
「し、秋斗さんはどうしてそんなにお辛そうなんですか?桃香様も皆も気付けたのに」
押し寄せる不安に胸が締め付けられ疑問を素直に話す。
「……雛里はこの乱世の向かう先が読めるか?」
返ってきたのは辛そうに見える理由ではなかった。教えてくれなくて少し悲しい気持ちになる。
乱世の向かう先、今回の戦が起こった事から予測される先の展開はどうなるか。
「……権力争いから始まったこの戦によって漢王朝の存在意義があってないようなものと認識され諸侯同士による群雄割拠の大陸になります」
「そうだな、各諸侯による勢力争い。己が力を誇示し、この大陸を自分達の手で治めようとするもの。今回起こった反董卓連合の件しかり、諸侯達の野心は抑えられないもんな。そこで俺達はどう動くべきだ?」
私達が動くべき道筋はどんなものなのか。予想されるのは――――
「侵略に対抗する事と勢力を広げる事……ですが各諸侯共に野心旺盛な今、弱小である私達はすぐに呑まれてしまいます」
「今回の戦での功績を見て少しは出世できるとしてもまだ足りない。その時俺たちはその侵略者に降伏するべきか否か」
一番民と兵の被害が少なく抑えられる方法だが侵略を是としてしまっては桃香様の理想の行く先は見れなくなるし潰えてしまう。
「逃げて助けを求め他の所で再起を計るか目的の近い諸侯と盟を結ぶかのどちらかを選ぶ事が最善かと」
「うん。きっとそうなるだろうな。ただ逃げた後で再起を計っても力が均衡した相手と同盟を結んで乱世を終わらせようとするだろう。桃香の理想のためには守る戦しかできないから。手を取り合ってとはそういう事だ」
その言葉にゾクリと背筋に悪寒が走る。この大陸の行く末と私たちの行く末を確信を持って話している。軍師でもないはずなのにこの人は私の読みを越えているのか。
この人は……何を目指しているんだ。それよりも――――
「秋斗さんは……守る戦だけでは足りないとお思いですか?」
「……逆に聞くが雛里は同盟などという甘ったれた現状維持でこの弱り切った大陸に長い平穏を与えられると思ってるのか?」
凍りつくような厳しい言葉。向けられた昏い目はいつものこの人のものではない。その色は絶望と哀しみと憔悴。こんな目は私に対して初めて向けられた。私は恐ろしく思いながらも目を逸らせない。
同盟とはお互いに牽制し合い監視し合う事も意味している。いつかは破棄される
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