第三章
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第三章
「実は御前にな」
「俺に?」
「ダンスの申し込みが来てんだよ」
意外な展開だった。その時の俺にとっては。
「どうだ?次の曲一緒にな」
「何処のお嬢様だよ。俺はな」
「カレッジを卒業したら結婚するんだよな」
「ああ、そうだよ」
これを理由にいつもダンスは断ってた。踊るのはいつも一人でだった。
その俺にだ。誘いを掛けて来た。馬鹿なお嬢様だと思った。
それでだ。その仲間に言ってやった。
「で、誰なんだよ」
「踊らなくても相手は聞くんだな」
「どんな馬鹿か知りたいからだよ」
本当にだ。この時はこう思ってた。
それで尋ねた。どんな馬鹿なのか。
「何処なんだ、その馬鹿は」
「ああ、こっちだよ」
仲間はこう言ってだ。指し示すと。
そこにだ。やけに小柄で楚々とした娘がいた。
茶色の髪にだ。緑の目をしている。唇は小さめで薔薇色だ。
肌がやけに白くてだ。すらりとしたスタイルを水色のドレスで包んでいる。小柄だがハリウッドにいてもおかしくはない娘だ。その娘を見てだ。
俺は何か。夢を見た気持ちになった。
それでだ。まずは仲間に尋ねた。
「何だよ、この娘」
「だからこの娘がな」
「俺とか」
「その酔狂な娘だよ」
「酔狂は余計だろ」
「けれど御前を見てな」
それでだとだ。俺に言ってきた。
「一緒に踊りたいって言ってんだよ」
「本当なんだな」
「俺は嘘は言わないだろ」
そうだった。こいつは確かに馬鹿だが素直で正直だ。だから嘘なんて絶対に言わない。このことだけは神に誓って言えた。
だからだ。俺も思いなおして答えた。
「そうだったな。じゃあか」
「ああ、本当だよ」
また俺に言ってきた。
「じゃあな」
「ああ、それじゃあな」
嘘を言っていないことに納得して。それからだった。
俺はだ。あらためてだ。その仲間に尋ねた。
「で、この娘がか」
「御前と踊りたいってよ」
「そうだよな。そうか」
「で、どうするんだ?いつも通りいくか?」
俺にだ。こう尋ねてきた。今度はこいつが尋ねてきた。
「断るか?」
「いや」
けれどだった。俺は。
実は好みだった。俺と今度結婚するその娘と同じだけ。それでだった。
俺はだ。こう答えた。
「今日だけはな」
「浮気か?」
「馬鹿、そんなのじゃねえよ」
内心ギクリとしながら返した。
「俺がそんなことするかよ」
「だったらいいんだけれどな」
「疑ってるっていうのか?」
「こうした話は疑った方が嬉しいしな」
仲間は楽しんでいる笑顔で俺に言ってきた。
「だからな」
「ったくよ、趣味の悪い奴だな」
「趣味が悪くても面白いといいんだよ」
こう返された。そんなやり取りの後で。
俺はそのお嬢様と
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