人中のために音は鳴る
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せんわ」
冷たい視線を送り続ける目を細めて本初は私に告げる。でも、そう言うと思っていた。
「私は自分の母を上層部に人質にとられている。だからあなたの目付け役になっている。あなたやあなたの大事な友達と一緒」
私の話を聞いた彼女は目を大きく見開いた。
「そんな……」
「信じてくれなくてもいい。ただ私はもうあなたに嘘をつきたくない」
何を考えているのか彼女の眼は焦点が定まらない。
袁紹はバカを演じているだけで本当は頭が人よりも優秀だ。
ただ臆病だった。袁家上層部に小さいころから散々抑え付けられ洗脳され逆らう気力ももっていない。
顔良と文醜という友達が出来て少し安定したのを見た袁家は二人を戦場で使い捨てる事も辞さないと本初に伝えた。
二人は優秀な将だが袁家としては体のいい駒。財力と圧倒的な兵力を持つ袁家からすれば替えが効く代用品と見られている。
彼女は大切な友達が人質にされた事を理解し自分は傀儡でいるしかないと思い、より一層言われるがままになった。
そこで派遣されたのが私。
本初が逆らうようなら報告しろと言われている。私自身も裏切るなら母の命はないとも。
今回の事を話すのも裏切りにあたる。
だが私は変わりたくなった。救いたくなった。抗いたくなった。
母には前から気にせずに自分のために生きろと言われていた。
でも見捨てるなんて、そんな事はできなかった。
しかしシ水関の後、明から説明を聞きあの人の事を多く理解した。そしてその在り方に同情と憧れを抱いた。
同時に桂花も羨ましくなった。仕えるべき本当の主を得ている事に。
私はどうだ。この臆病な主に仕えている自分を母に誇れるのか。
変えてみたくなった。自分の主を。
そのためにはまず自分の事を理解して貰うしかない。
「本初。私の夕という真名をあなたに捧げる。信じて貰えるまであなたの真名は預けてくれなくてもいい。私はあなたに本当の王になって貰いたい。王となって腐った袁家を変えてほしい」
私の言葉を聞いた彼女の顔は驚愕、そして畏れに変わる。
真名を片方だけ預けるなど前代未聞なこと。ましてや捧げるなど、高貴な彼女からすれば畏れを抱いてしまうのは仕方ない事だ。私自身も手が震えてしまっている。
真名とは、自身の存在そのものを表すに等しい。つまり私がした事は、自身の存在、その根幹から未来に至るまで全てを好きにしていいという事と同意なのだ。
これが私の覚悟。真名を一方的に差し出してでも本初を変えたい、変わってほしい。
彼女はこちらの瞳を覗き込み真剣に何かを考えている。そして唇を震わせながらゆっくりと言葉を紡ぎ出した。
「……あなたは……このわたくしの全てを知っていて尚、そこまでするんですか……?」
「私は母が大事。けど私に幸せになってほ
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