人中のために音は鳴る
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第に遠くなる暴風を見やりながら冥琳の元へ帰った。
陣の中央で難しい顔をしていたその人に自分の疑問を投げかける。
「ねえ、冥琳。どうしてそのまま虎牢関の攻めに移行しなかったの? 思春の工作は入り込めたんでしょ?」
冥琳の判断は信頼している。
確かに自分の勘でも虎牢関はどこか異常な気配を感じたがそれが何なのかは分からないのだから理由が知りたい。
「雪蓮。呂布ばかりに目を取られていたが陳宮も侮れなかったのよ」
どういうことだろうと考えていると小さく耳打ちをしてくれた。
その話された内容に驚愕するしかなかった。
思春、お手柄だわ。
手柄の方を優先しようとした自分がまだまだ甘い事に気付き、仲間の有能さに感謝を伝え皆を労う事にした。
†
「いい具合なのです。それにしても袁家の貪欲さには呆れるしかないのですよ」
夜に関わらず勢いのまま攻城戦を行おうと、蜜に群がる蟻の如く寄ってきた敵を確認しながら呟く。
部隊の撤退は飛将軍の殿での働きもありつつがなく完了している。
「でははじめましょうぞ! 奴らに我らが持つ怒りの火をお見舞いするのです!」
その号令を皮切りに兵達が雄叫びをあげ、油に浸した布に石を括りつけ敵に投げる。残りの油の入った小さな水瓶も投げさせる。
虎牢関前には火計のためにとっておいた藁や荷運び用の車を崩した木材にも油をかけて置いておいた。もちろん撤退に必要最小限な車はとってある。
地面にも粘性の高い油を染み込ませた布をそこかしこに置いてある。
虎牢関前の地面は連日の攻城戦で踏み固められ消火のための土は簡単には掘れないだろう。
夜襲の最中もここにだけは近づけさせないよう戦わせた。そのために時機がくるまで虎の子の呂布隊は後方で待機させていた。
軍師も将も飛将軍を恐れて下がっているからこそ対応が遅れる。疑問が出ても追撃のため圧して来るのに夢中で伝令はさらに遅れるだろう。
数が多く練度の低い、かつ欲の深い袁家の思考を読んでこそ成功しうる。
曹操軍も孫策軍も被害を抑えたいのだから攻城戦には本気で参加はしない。連日の攻城戦の被害からも夜襲後までしてくる事はないだろうと踏んでいた。
それに夜の闇に視界が限定され策は読まれづらくなっている。
「火矢を放て! 虎牢関に集る悪い虫の全てを燃やし尽くすのです!」
放たれる火矢は次々と敵に吸い込まれていった。
たちまちそこかしこで火の手が上がり敵兵達は混乱に包まれた。
車の配置は逃げ道の限定のため。
「よし! 逃げ惑う敵には通常の矢をありったけ放つのです!」
恐慌状態で右往左往する兵同士がぶつかり合って思うように逃げられない。火に包まれ叫びながら倒れる者、煙を吸い込み呼吸困難でもがき苦しむ者、逃げようとして背中から射られる者、倒れ
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