第一章
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第一章
裏どおりの天使達
雨が止まない。もうどれだけ降ったのやら。
俺はその中を彷徨っていた。けれどそれは一人じゃなかった。御前がいてくれたから。
「終わりじゃないよ」
「終わりじゃないか」
「だって。次があるから」
こう俺に言ってくれる。
「だから終わりじゃないよ」
「優しいんだな」
俺はその言葉を受けてからこいつに顔を向けた。それから無理して微笑んだ。
「相変わらず」
「そう?」
「ああ、優しいさ」
そしてまた言ってやった。
「本当にな」
「そうかしら」
俺がこう言ってもわからないようだった。こいつは。
「私は別に」
「何時でも俺の側にそっといてくれるじゃねえか」
まずはこのことだった。
「それに。困った時はいつも助けてくれて」
「困った時はお互い様じゃない」
こいつにとっちゃそんなことはどうでもいいことだった。本当に。
「そうじゃないの?」
「そうだけれどな。できる奴は滅多にいないんだよ」
特にこの街ではそうだ。せちがらくてどうしようもない、そんな街だ。外見は華やかだがそれでも中身は全然別だ。何処までも冷たく寂しい街だ。摩天楼の下にあるのは何もない。そのことがわかったのも憧れてこの街に来てからだった。その時からだった。
「御前以外にな」
「そうなのね」
「そうだよ。しっかしよ」
俺はまた不平不満に満ちた声で拳を握り締めた。
「また落ちたな」
「そうね」
「落ちてばっかりじゃねえかよ」
言いながらその握り締めた拳でコンクリートを殴った。殴ってもどうにもならないことはわかっているけれどそれでも殴らないと仕方がなかった。
「何やってもよ」
「また次受ければいいじゃない」
こいつはまた俺に優しい声をかけてくれた。
「そうじゃないの?次のオーディション」
「幾つ落ちてもか」
「幾つ落ちてもいいじゃない」
言葉は全く変わらない。
「最後に受かったら」
「最後にかよ」
また言う俺だった。
「これで最後にって思ったさ」
「そうだったの」
「これで受かるつもりだったんだよ。手応えもあったさ」
俺もこいつも必死にやったし調子もよかった。俺のギターにこいつのヴォーカル。それでいけると思った。ところがまた駄目だった。何度やっても駄目だった。摩天楼には夢が一杯転がっているように見えて全く掴めない。蜃気楼みたいなものだった。この街での夢なんて。
「それでもなんだよ、本当にな」
「だから次があるじゃない」
「次か」
俺はここでこいつの言葉を思いきり否定しようと思った。ところがここで口から出た言葉はこれだった。次か、この言葉が口から出た。
「次があるのかよ」
「ほら、これ」
ここで指差したのは壁だ
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