第五章
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吸いたいのを我慢しながらアニーと話をした。
「御前が退院してからな」
「わかったわ。それじゃあ」
「けれどな。カレッジは卒業させてくれよ」
このことだけは言っておいた。
「これでも苦労して入って今も続けてるんだからな」
「それで卒業したらあれだよね」
「ああ、トラックだ」
それしか考えちゃいなかった。リーゼントとトラック、これは俺のポリシーだ。それでアメリカ中を駆け巡ってやりたかった。だからそれしかなかった。
「それやるからよ」
「わかったわ。それじゃあね」
「また来るぜ」
こう言ってとりあえずアニーに背を向けた。
「またな」
「また来てくれるの」
「明日だ」
その日も言ってやった。
「俺のガキを見に来てやるさ」
「楽しみに待ってるよ」
部屋を出る俺にアニーの楽しそうな声が届いた。これが二十年前で女房との馴れ初めだ。何が何だかわからないままできた一番上のガキは物好きなことに日本の大学に行きやがった。下のガキはハンバーガーショップに通いながらハイスクールの生活を満喫している。それで俺は念願のトラック野郎になって今も楽しくやっている。家に帰ればアニーがいつもいる。何だかんだで幸せになれた俺の女房との馴れ初め、今思うとこれもこれで楽しい思い出だ。その時はそれこそ顎も腰も外れそうになっちまったが。
Missアニーの証言 完
2008・11・20
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