第2部:学祭1日目
第8話『暗転』
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んた達も気をつけな。
ターゲット追加。標的は桂、それに、あいつをかばう秋山さんだ」
微笑を続ける七海。ムギは顔が青ざめるのを通り越し、血の気を失っていく。
「そんな…澪ちゃんまで…。
お願いします! 澪ちゃんは私の大事な友達です!! あの子に危害を加えるようなまねはやめてください!!」
「あいつをかばっているんだから、秋山さんだって容赦はしないよ…」
「そんな…」
「どっちをとるかですね。あたしか、秋山さんか。
もっとも、秋山さんを取った場合、どうなるか分かってますね」
気がつくと、ムギの目がかすみ、ぐしゅぐしゅと鼻水の音が聞こえてきていた。
学校。
すっかり夜になり、今や喫茶店の後始末をする人間しかいなくなっていた。
いったん外を出て、ぼんやりと廊下を歩く泰介の向かいから、人影が現れる。
さわ子だ。
なぜか虚脱状態で、服も乱れ、ふらりふらりと歩いている。
顔は、何かされたかのように歪み、弛緩した口から涎が出ている。
「まさか、放課後ティータイムのさわちゃ…さわ子先生」
泰介が駆け寄ると、さわ子は彼の腕の中にぐったりとくずおれた。
「ああ…よすぎる…」
さわ子はうわごとのように呟いている。
「止さん…よすぎ…」
「あ、あの、さわ子先生、どうしたんですか!?」
泰介は正直、これからどうすべきか迷った。
霧の中で、家やビルの明かりが、ポツポツと町を照らす。
妹や言葉、それに心に御馳走するための材料を買って、誠はマンションに帰宅した。
安いひき肉も、4人前となると結構値が張る。
学祭でも大分使ったし、今月のこづかい厳しいなあ。
そういう思いを巡らせていると、今日の出来事がおのずと忘れられる。
というより、もう気持ちを前向きにすべき時だろう。
「いたるー? どこだー?」
声をかけながら、マンションの廊下を進む誠だが…思わず顔色が変わった。
妹が人質に取られている。
いたるが、意識を失った状態。
その状態で、茶髪、ポニーテールの少女の左腕に抱きかかえられている。
その少女は桜ヶ丘の学生服。
右手には、包丁。
「いたる…!?」
いたるを人質に取った少女の顔を見て、誠は…。
思わず、自分の両目をえぐりたいと思った。
だが、盲目になっても、この光景は焼きついて離れないに違いない。
妹を人質に取ったのは、自分に純粋な心を取り戻させてくれた人。
自分がだれよりも美しいと感じる人で、誰よりもそばにいてほしい人。
「君は、唯ちゃん…!? どうして…!?」
「『どうして』と聞きたいのは、こちらの方ですよ」低い、ゆっくりとした声で少女は口を開いた。「どうして、私のお姉ちゃんを誘惑したんですか?」
この言葉に、誠はポカンと
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