第2部:学祭1日目
第8話『暗転』
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時、喫茶店に行った時の、誠の笑顔が、焼きついて離れない。
始めてキスした時の、彼の赤らんだ顔も…。
そして、自分が屋上でああ言ったときの、あの傷ついたような顔…。
あのときは、頭の中が整理できなくて、ついああ言っちゃったけど…。
やっぱり、忘れられないや…。
『待って下さい、俺も、本当は…!』
続いて、この言葉が頭の中でリピートされていた。
そうだ。
私も、マコちゃんに彼女がいるとわかっていながら、あきらめきれず、近づいていたんだよね…。
それだけ、マコちゃんに…。
あのニコニコした顔に魅かれていたんだ…。
頭の中が、ぐるぐる回り始めた。
それとともに、手の中にある物も、ぐるぐると回転が速くなる。
唯の家のリビングでは、梓と純が、ソファーで隣り合わせになって話していた。
憂が2人を迎え入れた後、外出しているのである。
「そういうことがあったの…」
「ったく、純が無神経にベラベラしゃべるから、さらに状況が悪化しちゃったじゃない」
「だって、そんな複雑な状況があっただなんて思わなかったし…」
純はふてくされたように言う。
「それにさ、唯先輩だって、その人あきらめたんだから、それでよかったんじゃない?」
「だといいんだけどね…。それにしては立ち直りが遅い…。
どっちにしても、私は明日ゆっくりするから。
榊野に行かない。
あんないかれたところ、二度と行くもんですか!」
「梓ぁ、」純は苦笑いしながら、「アトラクションだけでも行ってくればいいのに。面白いよ」
「い・か・な・い!!」
梓はぷいっと顔をそむける。
「そういえば、みんなは?」
と、純。
「律先輩と澪先輩は、もう少し伊藤に話を聞いてくるって…あんなの相手にする価値もないのに…」
「そう? 私はコクっちゃいそうな人だったけど」
「このミーハー! 顔よりハートでしょ!!」
「あはは…それにしても、唯先輩もファーストキスを渡しちゃって、どうすんだろうねえ」
「自業自得でしょ。
あ、それとムギ先輩は、甘露寺に誘われて西園寺の家に行ってるよ。
ま、いろいろ迷惑かけちゃったし…」
「そう…」純はせんべいを食べながら、呟く。「そう言えば憂、遅いなあ…」
夜になったものの、月は全くなく、煙のような雲が厚く空を覆っていた。
家に帰ってから、世界は自分の部屋のベッドの上ですすり泣くばかり。
母は仕事で外に行っている。
傍らに刹那、そして光がいる。
「ねえ世界…」光は、「もう伊藤なんか忘れてさ、他のいい男見つけたほうが得だよ」
「光、今は下手に慰めたりしたら駄目だよ」
刹那は冷静にたしなめる。
「あの時は同情しちゃったけど、こんなことになるのだったら、敵に塩を送るんじゃなかったかな…
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