第2部:学祭1日目
第8話『暗転』
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てる姿なんだよ!!」
「…」
激しく、やつぎばやぎに話す誠の口調に、言葉は唖然として聞くしかない。
「そしてあの子は、決して汚したくない、汚させたくないって、思うんだ。
だから、言葉…。
唯ちゃんとは…、
例え唯ちゃんが俺のことを嫌いになったとしてもいい、会わせてくれないか」
「誠君…」
言葉は少しうなって、間をおいた。
電車のアナウンスが、次に停車する駅を告げる。
再び言葉は思案顔になってから、
「いいですよ。平沢さんとは、今までどおり接しても。
私も、秋山さんにいろいろと助けてもらいましたし。
それに平沢さん、私のために泣いてくれましたしね」
「そうだったな。」
くすくすと笑い、笑顔になった誠を見て、言葉ははっとなり、呟く。
「平沢さん…?」
「え?」
「あ、いえ、何でもないです。」彼女は赤面して、懸命に首を振ってから、どこか寂しげに、「恋人付き合いをしないという約束なら、これからも誠君が、平沢さんと会うのを許してあげます。
私だけが、深い関係になれるのならば…」
そこまで言われると、もはや断るわけにはいかなかった。
「わかった…」
これで自分の好色が治って、かつ唯ちゃんの笑顔を見られるのだから、これでいいんだ。
「振り出しに戻っただけですから、やり直しがきかないわけ、ないと思います」
言葉は言った。
先ほど熱く語りすぎた照れ隠しもあり、誠はさりげなく聞いてみた。
「なあ…秋山さんって、どんな人だ?」
彼女は面食らったような顔になったが、すぐに表情を戻し、
「誠君に、似ています」
「え…?」
「不器用だけど、すごく優しくて、一生懸命で…」
「そうか…? 俺は言葉に似てると思ったけどな、顔も性格も。
傍から見たら姉妹に見えるくらい。」
「そうですか?」
「それで、世界は田井中さんとか…。奇妙なぐらいの力の拮抗だな…」
世界に張られ、律に殴られた頬を、誠はさする。
言葉の表情が、曇る。
唇だけ笑みを浮かべ、話題を変える。
「今日、うちに来てくれますか?」
誠が答える前に、メールが着信する。
それを見て、
「ごめん、実はいたるが俺のところに来ててね、その面倒を見なくちゃいけないんだ」
「いたるさんって、妹さんですよね。
そうですか」言葉はまばたきしつつも、「じゃあ、私が誠君の家に行きますね。心も連れてきます。せっかくだから、家族ぐるみで付き合いましょう」
「あれ…誰もいないんじゃなかったっけ…」
「心は強く叱れば、私たちの邪魔はしませんよ」
彼女はにっこりと笑った。
日は暮れ、曇り空の中。
灯りを消した自分の部屋で、唯はベッドの上で体育座りになり、榊野学園の休憩室でくすねた『あるもの』を、右掌で転がしていた。
登下校した
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