第2部:学祭1日目
第8話『暗転』
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ニでお互い見かけていた。
けれど、2学期まで話すこともなく…。
突然、声をかけられたこと。
自分の腕に抱きついて下校していたこと、喫茶店でウキウキしながら話をしていたこと。
休憩室の中でのキス。
そして、屋上での別れの言葉…。
長い時間が流れる。
車窓から海が見えてきた。
いつの間にか誠は、あの歌を口ずさんでいた。
『♪キミを見てると いつもハートDOKI☆DOKI
揺れる思いは マシュマロみたいにふわ☆ふわ
いつもがんばるキミの横顔 ずっと見てても気づかないよね
夢の中なら 二人の距離 縮められるのにな♪』
そっと誠の手に、暖かい手が重なる。
「言葉?」
「『ふわふわ時間』ですよね。放課後ティータイムの」
「ああ…そうだよ…」
「でも…もう平沢さんは、誠君の隣にはいません」
「わかってる…」
半分自棄的に、彼は答えた。
「なら、いいじゃないですか」
「え?」
「私、誠君のことが好きです。誠君の隣にいたいんです」
「…」
誠はため息をつく。
流れるように過ぎていく風景。
言葉は少し、間をおいてから、
「今日、うちに来てほしいです。うち、だれもいませんから…」
「言葉…」
「私、はじめてですけど…やっと、誠君と本当の恋人になれそうで…」
「そういえば、俺もご無沙汰だったな…」
呟きながら誠は、自分の気持ちに正直に問いかけた。
答えは、一つしかなかった。
言った。
「実はゆ…平沢さんと会ってから、あまりしようって気が起きないんだよ…。
最後にしたのは、世界とけんかした時だったかな。八つあたりもあった。
世界と『練習』して以来、なんかあの時の感触が忘れられなくなって…。
それで、あいつと猿みたく毎日していたんだけど、それが嘘のようで…」
「そうなんですか…?」
「…すまない。
もう分かってると思うけど、俺はお前がいながら、隠れて世界と関係を持っていた。
あげくゆ…平沢さんとも、誘われるままに近づいて、キスまでしてしまって…」
言葉の表情が、一瞬曇った。
が、穏やかに、しかしきっぱりと言った。
「もういいんです…。どれだけ誠君が他の人に興味を持っても、私が一番好きならば…」
「うん、わかってる。」うつむき加減に誠は答えた。
が、いたたまれなくなって、
「でも、分かってくれないか。
俺の悪い女癖を直してくれそうなのは、平沢さん…唯ちゃんの笑顔かもしれないんだ!」
「誠君…?」
「あの子の笑顔を見てから、俺はしたいなんて思わなくなってきてる。
あの子の笑顔が見られるなら、俺はそれで十分って!
純粋な心を取り戻せるって、自分で分かってきてるんだ!!
女癖の悪さは自分でもまずいと思ってる。
唯一の薬が、あの子が笑っ
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