人中と例外
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じ、月が殺してくれたはずの自分がそこにいる。もうあの時の自分には戻りたくない。
だからこっちを見ないで。もう自分に思い出させないで――
「呂布将軍!」
振り下ろされた画戟は彼の身体に吸い込まれる寸前で剣の横なぎによって弾かれていた。
同時に呂布は飛びのき秋斗殿から離れる。
ゆらりと起き上がった彼は立つのがやっとなのかただ呂布を見ている。
呂布は斬りかかる事もせず武器を構え警戒しているだけだった。
「呂布将軍! 陳宮様の合図から時間が経っています! 我らはもはや最後尾、すぐに後退を!」
近づいてきた兵の一言で呂布はすっと武器を降ろし、近寄る兵を殺しながら暴風のように去って行った。
それに続いて袁紹軍と袁術軍の兵が追撃に向かう。
秋斗殿はそのまま立ち尽くしていたが、徐晃隊副長が近づくと何かを話している。
「う……」
「鈴々! 目が覚めたか!?」
「愛紗……呂布は……?」
「敵の作戦のためか撤退していった」
聞きながら鈴々は立ち上がる。
「お兄ちゃんは?」
「怪我をしているが無事だ。あそこに」
立っている秋斗殿を見て安心したのかゆっくりと私を支え起こしてくれた。
「愛紗もひどい怪我なのだ」
「関羽将軍! 張飛将軍!ご無事ですか!?」
呂布隊の猛攻が無くなりこちらの隊も戻ってきたようだ。
「問題ない。それより隊の状況を――」
二人で報告を聞いていると秋斗殿がふらつきながらもこちらにやってきた。
「秋斗殿、大丈夫ですか?」
「ああ、少しふらつくが大丈夫だ。すまない」
そんな青い顔をしながら言われても説得力がないのですが。
心配そうに覗き込んでいる鈴々の頭を少し撫で彼は続ける。
「俺たちは本陣へ向かおうか。曹操軍が少し押されているらしい。曹操軍の援護は袁紹軍が代わりにしてくれるようだが、万が一のために桃香達を守りに行こう」
あの曹操軍が押されているとは……いや、相手も必死なのだろう。
「わかりました。すぐに向かいましょう」
「お兄ちゃん……今回はもう戦わないのかー?」
確かにまだなんとか戦えるが、と言う前に秋斗殿が口を開いた。
「多分な。ここでまだ戦いに向かうと俺たちの軍の被害が大きくなりすぎる。それに今の俺達じゃ邪魔になるだけだ」
それが最善の選択。呂布との戦闘の後で兵達の士気も落ちてしまっているのだから。
「ではいきましょう。こちらの軍自体は後退しているのですか?」
「袁紹軍が曹操軍との間に割って入ってきたんだとよ。何を考えているのかわからんが。それにより後退を余儀なくされたらしい」
私達を守るため……などということはないだろう。
「とにかく戻るのだ!」
鈴々にせかされ本陣への路につく。後方から戦の音を聞きながら。
「……悔しいのだ。鈴々
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