人中と例外
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違和感が顔を覗かせた。
あの女狐相手に上手くいった。いや行き過ぎている。
「じゃあこれは――」
「そ、またあいつの掌の上ってわけ。被害を受けているのは新兵ばかりよ」
雪蓮はいら立ちからか剣を鞘から抜き差しして気を宥めながら言いきった。
三人の将は呂布個人に対する袁術本人の防衛のため。先陣でなく中軍に、それも将のみがいたのはこちらの情報が洩れていないと思わせるため。
「……ならもう茶番を続ける意味はないな」
「こっちもこのままじゃ被害が増える一方だもんね。サクッと押し込んだほうがいいかも」
そうするにしても孫策軍のおかげで持ち直した、と周りには思われない。そろそろ袁紹軍の将がこちらまで来るはずだ。混乱を共に収めたとしてもそいつらの名が上がる。
悔しさで唇を噛みしめ少し血が滲む。
ここまで計算しているのか。
あの女狐だけではここまで見事に読み切る事など出来はしない。すると田豊、あれが裏で糸を引いているな。
「ここで虎牢関の一番まで取らせるつもりかもね」
「……いや、それだけはさせん。既に明命と思春に指示を出してあるから問題ないだろう」
後々を見ても今押し返すのが最善か。
「雪蓮、少し本気で働いてもらうぞ」
「あら、もう我慢しなくていいのね?」
「ああ、頼む」
「じゃあ行ってくるわ」
任せたぞというとひらひらと手を振って行ってしまった。
見送りながら自分の見通しの甘さに拳を握りしめ、せめてここから少しでも有利に働けるようにと思考を切り替えた。
†
夏候惇に曹操軍の攪乱を邪魔されて一騎打ちをしている最中、後方から銅鑼の音が戦場に鳴り響く。
「惇ちゃんごめんなぁ。あんたと戦うんはめっちゃ楽しいねん。けどうちもやることあるさかい堪忍な」
関羽の時といい今といい、本当に自分は運が無い。だが月を守るためなのだから自分の欲など二の次だ。
「待て! 張遼! 逃げるのか!?」
策を読んでいたくせにこちらの状況がわかっていないのか。華雄と同じ匂いがする。こういう奴は嫌いじゃない。
「残念やけど、せやな。うちは撤退や。運がよかったらまた戦おうや。張遼隊、引くで!」
身を翻し隊に指示を出し後軍の間を縫っていく。
ねねが速めに撤退の指示を出したのは正解。読まれていた以上このまま長く続けると戦況はもはや取り返しがつかなくなる。
確実に苦しくなった。
まさか読まれていたとは思わなかった。伝令が着くと同時に関のあらゆるところに警戒を促しネズミは殺しきったはずだったが……関に入る所を見ただけで引いた奴がいたのか。
後悔しても遅い。
奇襲がうまくいったのは恋側のほうだけか。
後軍の陳宮隊の旗の所に行くとねねが手を振っていた。
「霞! お疲れ様なのです!」
元気良く声を掛けてく
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