X:そこに待つのは大樹にあらず
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壊された”、“何時の間にか現れ何時の間にやら消えている”、“襲撃されはしたが殺しはしなかった”……等、その騎士についての噂には事欠かず、あの腕きき情報屋“《鼠》のアルゴ”でさえその実態は欠片も掴めなかったという、謎だらけのモンスターだった。
そのモンスターがフロアボスだったとは、誰も想像すらしていなかったに違いない。
「大丈夫だ! 数人で囲めば何とかなる! 攻撃に回る人数は少なくなるが、基本を守れば問題はない!」
リンドの声で、震えていた者達はハッとした様に構えなおした。噂での実力が本物ならば脅威だが、それは攻略組では無い者達の話。攻略組数人で堅実的に挑めば、きっと倒せる筈だと、彼等は噂を頭から振り払った。
「いくぞ!」
リンドのその掛け声と共に数人が一斉に取り囲み――――
ボスMobの唯の“蹴り”で数人一遍にブッ飛ばされる。
「な―――うばっ!?」
リンドはブッ飛んできた物に巻き込まれ、派手に転がってしまう。仮にも攻略組である者達を、まるで雑魚扱いするかのように蹴り飛ばした蒼錆色の騎士は……
「オオオオオオォォォォォォォオオオオオ!!!!」
フロア全体に響いてもまだ足りない程の強大な咆哮を、目を禍々しく光らせて発した。それを合図に本格的に戦いが始まる。
……その騎士の名前に、『Caligula』という文字が追加されたのを、誰一人知らぬまま。
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